英国の新首相に5日決まったエリザベス・トラス外相は強気の言動が英政治史上初の女性首相、サッチャー元首相と重ねられ、「新たな鉄の女」(保守党員)と評される。ロシアへの強硬姿勢が与党・保守党で評価されたが、一方で交渉力や政策の一貫性を疑問視する声もあり、国民の信頼構築も大きな課題となる。(ロンドン 板東和正)
トラス氏は1975年、英オックスフォードで、数学者の父と看護師の母の間に生まれた。両親は最大野党・労働党の支持者で、サッチャー政権(1979~90年)の政策に批判的だった。
だが、トラス氏自身は「小さな政府」を志向し、「英国病」と呼ばれた経済を新自由主義的な政策で立て直した「サッチャリズム」を信奉。2010年に保守党の下院議員に初当選し、今回の保守党党首選の討論会では「最も尊敬する政治家はサッチャー氏」と明言した。
トラス氏は党首選で、30年までに国防費を国内総生産(GDP)比3%に引き上げる方針を示し、必要に応じて核兵器を用いる「準備がある」とも強調した。英国の政治専門家からは、サッチャー氏が東西冷戦時代、ソ連に対する国防強化など強腰姿勢で臨んだことを踏まえ、「トラス氏はその再来を印象づけている」との見方もでている。