主張

首相のおわび 国民の信用取り戻すには

岸田文雄首相は会見で自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係について、国民の疑念を招き「率直におわびする」と述べた。

自民党は役員会で、教団や関連団体と関係を持たないことを基本方針とし、国会議員と教団との接点を調査した上で、茂木敏充幹事長は方針を守れない議員は「同じ党で活動できない」と言明した。

これで急落した支持率の回復が望めるかは、これらの措置を徹底することができるか、今後の党の姿勢にかかっている。

過去に霊感商法で多くの被害者を出し、現在も高額寄付などで信者家族らを苦しめる教団との関係を断つべきは当然である。だが調査対象を国会議員に絞ったのは中途半端ではないか。地方議員は数が多く調査に時間がかかるなら、せめて国会議員と同様、教団との関係断絶を強く求めるべきだ。

政府と自民党が信用を失ったのは、この問題で8月15日に「個人の政治活動に関するもので、調査を行う必要はない」とする答弁書を閣議決定しながら、半月足らずで調査を命じる定見のなさや、この間の個々の閣僚、議員らによる「記憶にない」「知らなかった」といった無責任、無知、不勉強を披瀝(ひれき)する対応の数々だった。

教団が「反日」を教義とし、日韓の歴史問題による贖罪(しょくざい)意識を洗脳の具としてきた実態が改めて明らかにされた今後は、従来の言い訳は全く通じなくなる。

憲法が保障する「信教の自由」に反するとの意見もあるが、「言論の自由」と同様に憲法が保障する自由は「公共の福祉に反しない限り」の範囲にとどまると解すべきである。

加えて岸田首相の「おわび」に致命的に欠けたのは、安倍晋三元首相を死に至らしめた反省であり、テロへの怒りである。警備の不備を認めて警察庁長官、奈良県警本部長は引責辞任したが、政治家は国家公安委員長をはじめとして誰も責任を取っていない。

教団への恨みを持つ容疑者は知人への手紙に「安倍は本来の敵ではない」と記し、「元首相を襲えば教団への非難が集まる」と供述したとされる。自らの主張を暴力の介在で広めることを企図した冷酷で典型的なテロだった。

教団の問題を論じる際には、必ずテロの否定とセットで行うべきである。

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