立川らく兵の浮世日記

演芸界の中心でもある新宿

立川らく兵
立川らく兵

「ミュージック・テイト西新宿店」というCDショップがクラウドファンディングを始めました。日本でも数少ない落語・演芸専門のCDショップです。新宿で60年のあいだ続いてきた、歴史あるお店です。

コロナ禍の演芸分野への影響は大きなものですが、CDショップでの売り上げにも大きく響いています。そこでミュージック・テイトでは、クラウドファンディングで資金を募り、店舗を移転してお店を続けることにしたそうです。支援募集期間は8月30日から9月30日までとのこと。

私は落語家に入門する前、落語ファンとしてミュージック・テイトに通っていました。今から20年ほど前でしょうか。その頃の店舗は西新宿ではなく、紀伊国屋書店新宿本店内の一角にあり、折を見てはそちらに足を運んでおりました。

落語のCDを買おうと思えば、まずはミュージック・テイトに行く。ここで探せばひと通りのものがそろっていましたから、昭和の名人たちの音源を始め、いろんなCDを買い求めました。

その当時は、商品の額に応じてスタンプカードを押してもらい、スタンプの数がたまると、紀伊国屋書店の4階ホールで開かれている「紀伊国屋寄席」に招待してもらえました。

紀伊国屋ホールは若き日の大師匠・立川談志が「ひとり会」を開き続けた場所でもあります。そのホールで、人間国宝の五代目・柳家小さん師匠や柳家小三治師匠をはじめ、いろんな方の落語を聴くことができたのは、落語ファンとしての宝になりました。

その後の平成23年、東日本大震災の年に、ミュージック・テイトは紀伊国屋書店から西新宿に店舗を移しました。その西新宿店では、CDやDVDの販売と同時に、店舗を会場にして若手落語家が勉強会を開くなど、やはり東京の落語界には欠かせない場所となりました。この頃には私も落語界に入門していましたから、先輩と会を開いたり、落語家としてずいぶんお世話になりました。

ミュージック・テイトにはこれからも末永く、落語界を支えていただきたいと考えています。

また同じ新宿では、落語定席の新宿末広亭が、8月末までにクラウドファンディングを行ったところです。

大師匠の談志が晩年、ふらりと末広亭の楽屋に寄った、という話をよく聞きました。寄席での修業時代を思い出すうちに、足が向いたのでしょうか。新宿は東京の中心でありながら、演芸界の中心でもあると、つくづく感じます。(おわり)

立川らく兵 宮崎県出身。平成18年8月、立川志らくに入門。24年4月、二ツ目昇進。

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