「らしくないな」と思ってしまった。8月27日に投開票された日本維新の会の代表選のことだ。
新代表となった馬場伸幸衆院議員は、順当な人選だったと思う。幹事長や共同代表といった党の要職を歴任し、国政選挙の際は候補者選びに奔走するなど「組織の屋台骨を支えてきた」(松井一郎前代表)人物だ。
私が引っ掛かったのは、馬場氏が選出された経緯である。当初、馬場氏のほかに東徹参院議員が有力候補と目されていた。大阪府議らを中心に支持を集め、接戦を予想する声も聞こえた。だが、馬場氏を支持する松井氏らが、水面下で東氏を推す府議たちに働きかけ、切り崩しを図った。
結局、東氏は出馬表明の2日後に断念し、選挙戦は盛り上がりに欠けた展開となった。東氏を推していた地方議員からは「できレースだ」などと批判が続出。さらに馬場氏を支援する国会議員が投票の秘密を侵す不正行為も発覚し、しらけたムードになった。
平成24年に松井氏らが国政政党の維新を立ち上げた当時、大阪府庁担当として取材していた。「身を切る改革」「しがらみのない政治」など簡潔な言葉を掲げ、議員定数や報酬の削減といった改革を断行する。「開かれた政党」として党の方針を決める会合は原則公開とする。看板政策「大阪都構想」は住民投票で是非を決める―。そうした分かりやすさはある種のすがすがしさを感じさせ、次第に支持を広げていった。
ならば今回の代表選も分かりやすく、東氏と馬場氏が正面切って戦い、勝った人物が新代表ということでよかったのではないか。
成り行きに不満をくすぶらせる府議は少なくなく、ある府議は「戦わないよりも戦うほうが党内が分裂しなかったのでは」と疑問を呈する。有権者にとっても後味の悪さを感じた結末だったかもしれない。
新体制の維新にとって最初のハードルは、来春の統一地方選だ。馬場氏は600議席獲得を目標に掲げ、届かなければ辞任する考えを示している。地方議会の強化は党勢拡大にあたり不可欠な工程だが、党内が不協和音のままでは到底達成できない。
【プロフィル】江森梓
平成20年入社。京都総局を経て、24~26年、大阪府庁を担当。大津支局などに赴任した後、今年5月から再び府庁を担当。