主張

新型コロナ対策 共存へ早急に全体像示せ

岸田文雄首相が先の記者会見で、新型コロナウイルスとの共存に向けた新たな対応策を示す考えを表明した。

新規感染者の全数把握や自宅療養期間の見直し、健康観察を行う健康フォローアップセンターを含む療養体制などの全体像を示すという。

首相は「感染防止と社会経済活動の両立を強化する」ためだと語った。だが、公表時期は「感染状況を見ながら決定していきたい」とするにとどめ、方策の詳細を明らかにしなかった。

相変わらず、もたついている印象である。自治体や医療現場の備えを万全にするためにも、まずは対応策の詳細を示すべきだ。その上で感染状況を見極めて適切な実施時期を判断すればいい。

厚生労働省に助言する専門家組織は「いまだ全国的に高い感染レベルにあり、医療提供体制の厳しい状況が継続することが予想される」としている。秋以降、新型コロナと季節性インフルエンザの同時流行も懸念されている。

医療現場の逼迫(ひっぱく)緩和策や、それと並行して経済社会を回す仕組みづくりは急を要する。後手の対応で現場の混乱を招いた従来の悪循環を断ち切るべきである。

岸田政権が全体像の一部に位置付ける全数把握の見直しをめぐる状況は象徴的である。政府は医療現場の逼迫を緩和する緊急措置として、医師が届け出る「発生届」の対象者を高齢者や重症化リスクが高い患者に限定できるようにした。自治体側の要望を踏まえた措置で、運用開始は2日である。

ところが、導入の判断を自治体側に委ねた結果、2日から実施するのは宮城、茨城、鳥取、佐賀の4県にとどまった。国が健康観察をどう担保するかが明確にならなければ、容体の悪化に責任を取れないというのが多くの知事の本音だろう。

首相はその後、一転して全国一律に導入する考えを示し、同時に特定医療機関を指定し報告を求める「定点観測」を検討していることも明らかにした。だが、健康観察の在り方も含めて、これらの詳細をまとめて提示しなければ自治体側の戸惑いは解消できまい。

これでは首相の指導力にも疑問符がつく。自治体や医療現場の意向を正確にくみ取り、国の責任で感染状況に応じた政策を強力に推進する。その実行力が問われていることを認識すべきである。

会員限定記事会員サービス詳細