世界基準のBMXコース、自転車専用の県道… 「サイクル王国・山梨」へ加速

8月に新設された「おんしりんバイクパーク」。国際競技も開催可能だ=山梨県富士吉田市(平尾孝撮影)
8月に新設された「おんしりんバイクパーク」。国際競技も開催可能だ=山梨県富士吉田市(平尾孝撮影)

山梨県が掲げる「サイクル王国」に向けた動きが加速している。国内最大のマウンテンバイク(MTB)専用コースが昨年、南アルプス市にオープン。8月には富士吉田市にバイシクルモトクロス(BMX)、MTBの国際競技も開催可能なコースが新設された。長崎幸太郎知事は県南部の県道で、休日限定の「自転車専用道構想」を表明。ポストコロナの観光誘引を狙う。

プロも「太鼓判」

「これだけのレベルのコースがあるのは、国内では福島県とここだけ。初心者が楽しめると同時に国際大会もできる、さすがの仕上がりです」

8月21日、富士吉田市の恩賜(おんし)林庭園内にオープンした自転車施設「おんしりんバイクパーク」。BMXプロライダーの栗瀬裕太さん(40)は、起伏のあるコース「パンプトラックエリア」を走った感想をこう述べた。

同パークは4千平方メートルの敷地に、全面舗装のパンプトラックエリアや、森林に囲まれた入門向けのトレイルエリアなどを整備。東名・新東名と中央道をつなぐ「東富士五湖道路」の富士吉田忍野スマートインターチェンジから数百メートルと、県内外からのアクセスも良好だ。

パンプトラックは世界選手権も開かれ、若者を中心に人気が高まっているが、国内に国際競技レベルのコースはほとんどない。栗瀬さんは自身も北杜市で自転車オフロードパークを運営、「首都圏に近いだけに大会の集客も見込みやすい。さらに、西日本エリアからも走りに来るだろうし、愛好家の聖地になる」と期待を寄せる。

地域おこし続々

県土の78%が森林を占める山梨県にとって、MTBとの親和性は高い。昨年11月に南アルプスマウンテンバイク愛好会(南アルプス市)のメンバーが造成した「南アルプス立沼マウンテンバイクパーク」は、8コースで総延長約3キロと、国内最大級だ。

また、北杜市で8月21日にオープンした総合教育施設「いこいの杜」にはMTBコースが設置。丹波山村は同20、21の両日、村営スケート場でMTB体験会を開いた。今後、村内でのMTBツアーなどを計画しており、村おこしにつなげていく考えだ。

富士川に沿って

県と市川三郷、富士川、身延、早川、南部の峡南5町の地域活性化を進める会合では、長崎知事が「身延町の波高島以南の県道の一部を自転車専用にして、周辺に地元が出店して盛り上げる実証実験を行いたい」とぶち上げた。

休日に時間限定で車を通行止めにし、自転車専用コースを作る構想で、サイクルツーリズムの目玉にとの考えだ。富士川沿いで景観も良好。このエリアは人気アニメ「ゆるキャン△」の舞台でもあり、「聖地巡礼」などで新たな観光資源として期待が高まる。

ただ、JR身延線各駅からのバスやタクシーなど「2次交通」が不足。電動アシスト自転車の活用などでサイクリングを盛り上げ、解決策につなげることも検討している。

山中湖村は自転車の聖地化をアピールする=山梨県山中湖村(平尾孝撮影)
山中湖村は自転車の聖地化をアピールする=山梨県山中湖村(平尾孝撮影)

五輪レガシーも

サイクル王国に向けた山梨県の潜在能力はもともと高い。東京から甲府まで約130キロという首都圏からの好アクセスに加え、富士山五合目までのスバルラインを一気に駆け上がる国内最高峰の公道レース「Mt.富士ヒルクライム」など有名レースが存在する。果樹園など風光明媚(めいび)な場所を走るサイクリングコースの整備も進んでいる。

昨年の東京五輪自転車ロードレースのコースの一部となった山中湖村は、五輪のレガシーとして「自転車の聖地」化を打ち出した。関係者は、潜在的な強みに新たな魅力を加えることで「サイクル王国・山梨」の盛り上げにつなげたい考えだ。(平尾孝)

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