1941(昭和16)年夏、米国や英・蘭(オランダ)が日本への石油全面禁輸に踏み切った背景に、米国政府内にいた2人のソ連スパイの「工作」があったとする研究結果を、在米の歴史研究者、斎藤三知雄氏がまとめ、『日米開戦と二人のソ連スパイ』(PHP)として出版した。石油枯渇の危機に直面した日本では、「対米戦やむなし」論が大きく浮上。その後の戦争回避に向けた交渉も決裂し、開戦へとつながった。第二次世界大戦終結から77年。ソ連や共産主義の「戦争責任」の解明は終わっていない。
「全面禁輸」ではなかった
斎藤氏によると、この2人のソ連スパイは、41年当時に財務省通貨調査部長だったハリー・デクスター・ホワイトと、国務次官補の補佐だったアルジャー・ヒス。米陸軍などが米国内のソ連スパイとモスクワの暗号通信を傍受、解読したヴェノナ文書やソ連崩壊後に公開されたソ連諜報機関の機密文書により、ホワイトはソ連の「協力者」、ヒスはソ連の影響下にあった米国共産党の秘密党員でソ連の軍事諜報に協力していたことが判明している。