ビブリオエッセー

兄弟と1匹。絆の物語 「荒野にヒバリをさがして」アンソニー・マゴーワン作 野口絵美訳(徳間書店)

いつものように日曜朝刊の書評欄を読んで気になり、注文しました。児童文学のカーネギー賞受賞作と紹介され、手に取ると舞台は「ヒースの生えるヨークシャーの荒野」とあります。どんなところなのか、浮かぶのは昔読んだE・ブロンテの『嵐が丘』。ヒバリの舞台は少し北の国立公園ですが想像が膨らみます。

「こんなはずじゃなかった」。こうつぶやくニッキーは早春のある日、父の勧めで兄のケニーと、国立公園の荒野にヒバリを探しに行きました。愛犬のティナも一緒です。ところが折悪く季節外れの雪が降り出し、気がつけば道を見失い、迷子になっていました。

兄弟はまだ十代の少年たち。ケニーは特別支援学校に通う生徒で一つ年下のニッキーは幼いころから兄の面倒をよくみてきました。さらにティナは兄弟に命を助けられた犬。この本はそんな二人と一匹の「絆の物語」です。

自然の猛威の中で、二人はずっと話を続けます。母の行方はわからず、父はアルコールが手放せないという問題の多い家庭でした。でも二人はユーモアを忘れない。即席話を作ってひたすらケニーを励ますニッキーです。夜になり、寒さが二人を襲います。道を探しながらニッキーは崖から落ちて動けなくなりました。

終盤、物語は40年後に移りますが、二人が探しあてたものとは何だったのでしょう。ヒバリは飛翔する「希望」の象徴でした。

すっかり気に入って原文でも読んでみようと『LARK』(原題)も取り寄せました。この翻訳を傍らに読み進むと話のニュアンスや若者らしい言葉のやり取りから、互いを思いやる気持ちが伝わってくるように感じました。

十代の孫たちに薦めたらこの物語をどう読むでしょう。聞いてみたくなりました。

奈良市 吉岡順子(75)

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