主張

防災の日 複合と激甚化に備えよう

猛烈な台風11号が沖縄本島に接近している。沖縄の人たちにとっても経験がないほどの暴風となる恐れがあり、厳重な警戒が必要だ。

台風11号は沖縄の南海上で動きを緩めた後に北上する見通しで、本州沿いに停滞中の前線も活発化している。暴風や大雨など台風の影響が長引くことも想定し、命を守るための備えと行動を徹底したい。

1日は「防災の日」である。

99年前の大正12(1923)年9月1日に起きた関東大震災では、台風による強風が火災を拡大させる要因となった。10万5千人の震災犠牲者のうち9万人以上が焼死者である。

現在の日本列島は地震の活動期にあるとされる。マグニチュード(M)8~9の南海トラフ地震の切迫度が高まり、M7級の直下型地震はいつ、どこで発生してもおかしくない。

一方、欧州の熱波、パキスタンの大洪水、中国の干魃(かんばつ)など、気候変動の影響とされる激甚気象が世界各地を襲い、日本でも真夏では異例の長雨や線状降水帯を伴う豪雨により、河川氾濫や浸水被害が各地で発生した。温室効果ガスの排出削減と並行して、気象災害の激甚化を想定して対応力を強化する取り組みが必要である。

大規模地震や火山噴火と、台風や豪雨、記録的な猛暑などの気象災害が同時、もしくは立て続けに起こる「複合災害」の危険度が、極めて高い状況にあると、認識しなければならない。

「台風、高潮、津波、地震等の災害について認識を深め、これに対処する心構えを準備する」という防災の日の趣旨を、一人一人が実践したい。

自分の住む場所で起こりうる災害と命を守る手立てを再確認する。併せて、避難訓練などで実行力と心構えを高め、課題を洗い出すことが大事だ。あらゆる複合災害に完璧に備えることは不可能でも、それぞれの災害への備えと実行力を高めることが、命と暮らしを守る力の基礎となる。

そのためにも、9月1日とは別に台風や豪雨災害に対象を絞った「もう一つの防災の日」を、梅雨入り前の時期に新たに設けることを提言する。台風の渦中や豪雨災害の後では「備える」という意義が半減するからだ。

今の日本で、防災の日を年に1度に限る理由はない。

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