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女優・泉ピン子<29> 聖火リレー、旭日小綬章、そして老後の楽しみ

東京五輪の聖火を掲げ、セレモニーに参加した
東京五輪の聖火を掲げ、セレモニーに参加した


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《平成28年にはドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)に出演。主演の米倉涼子さんのほか、西田敏行さん、吉田鋼太郎さんらと共演した》


フリーランスの天才外科医である大門未知子の腕を見込んで「東帝大学病院」に雇う副院長の役でした。男社会での出世争いに敗れたことがあり、人の話は聞かず、自分の言いたいことしか言わないというキャラクターです。

米ちゃん(米倉さん)はいい女優ですよね。またこの作品で共演したことにより、吉田鋼太郎さんと仲良くなりました。〝こうたん〟って呼んでいて、私は彼が出演する舞台や劇団の追っかけをしています。老後の楽しみですね。彩の国さいたま芸術劇場(さいたま市)の「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の2代目芸術監督としての活躍も楽しみです。彼の奥さんとも仲良くなりました。

今度の同シリーズの阿部ちゃん(阿部寛さん)主演の舞台「ヘンリー八世」の再演も、小栗君(小栗旬さん)主演の「ジョン王」も見に行こうと思っています。


《30年には大河ドラマ「西郷(せご)どん」(NHK)に出演し、将軍の母で〝大奥のドン〟である本寿院を演じた》


天璋院篤姫を演じた北川景子さんのしゅうとめ役でした。景子ちゃんはいい子です。最初、びっくりしたのは景子ちゃんに「『渡る世間は鬼ばかり』の五月(さつき)さんとお芝居できるのがうれしい」と言われたことです。なんて素直なお嬢さんなんだろうと思いました。普通、あのクラスの女優はそんなこと、言いませんよ。笑っちゃいましたもの。かわいいと思いました。

それから、彼女が主演するドラマ「家売るオンナ」(日本テレビ系)に出てほしいと言われました。さすがに社交辞令だと思っていたんです。だって、そういうことを言う人は多いけれど、本当に出てくれって話を持ってくる人は少ないから。でもね、実際に翌年の「家売るオンナの逆襲」(同)へ出演することになって、「本気だったんだ…」と思いました。私が昆布締めを作ったのをあげたことがあり、それが好きだというから、また作っては送っています。本当にかわいいですよね。


《同じく30年には、平昌冬季五輪の聖火リレーに参加し、集合住宅が立ち並ぶエリアを「2020東京ファイティン(頑張れ)」「平昌ファイティン」などと声を上げながら走った》


この日のためにトレーナーをつけ、練習を積んだかいあってか、あっという間に決められた区間を走り切りました。

前年に東京五輪・パラリンピックの聖火リレー検討委員に選ばれていました。一度も休まず、会合に出席しました。

昨年行われた東京五輪では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で当初予定されていたリレーはできませんでしたが、無観客のセレモニーで、私は中央区銀座生まれの走者として、最後に聖火皿へ炎を移しました。


《令和元年には、女優として旭日小綬章を受章した》


最初、断ったんですよ。背景は違いますが、尊敬する杉村先生(女優の杉村春子さん)は文化勲章すら2度も断っていますし。でも、父親が生きていたら、喜ぶだろうなと思い直しました。やっぱり、国から認められるというのは、親が喜びます。とくに父はそういうのが好きでしたし、私があの世に行ったら「よくやった」と万歳してくれるはずです。

この世で最も喜んでくれたのは橋田先生(脚本家の橋田寿賀子さん)でした。「こんなにうれしいことはない」と、泣いてくれました。受章は橋田先生が出演させてくれたNHK連続テレビ小説「おしん」のおかげだったと思っているので、恩返しができてよかったです。(聞き手 三宅令)

〈30〉に続く

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