米、台湾に1500億円武器売却 圧力「常態化」対抗、対艦ミサイルも

【ワシントン=渡辺浩生】バイデン米政権が台湾向けに約11億ドル(約1500億円)の武器売却を検討している。米政治サイト、ポリティコが29日報じた。連邦議会に売却承認を申請し、認められる見込みという。売却案には対艦ミサイル60発、空対空ミサイル100発が含まれる。ペロシ下院議長の訪台後、中国が台湾への軍事的威圧を「常態化」しており、台湾の自衛力を支える武器売却を進めて対抗する姿勢を示す。

米政権は、今年2月のロシアによるウクライナ侵攻を抑止できなかった教訓から、議会も超党派で台湾の対中抑止力の向上を目的とする法案を準備している。

ポリティコによると、計画には、対艦ミサイル「ハープーン」の空中発射型60発(3億5500万ドル相当)と空対空ミサイル「サイドワインダー」100発(8560万ドル相当)、監視レーダーの関連費用が含まれる。ミサイルは台湾空軍が保有する米国製F16戦闘機が搭載できる。

1979年に制定された台湾関係法は、平和的手段以外での台湾の現状変更の試みは「米国の重大な関心事」とし、「十分な自衛能力の維持」に必要な武器などの供与を定めている。

ペロシ氏訪台以降、中国の軍用機や艦艇が中台間の事実上の停戦ラインである台湾海峡の中間線を越える事例が相次いでいる。中国側は侵攻能力を誇示するとともに、半導体の供給拠点である台湾の事実上の封鎖も念頭に置いて世界経済に揺さぶりをかけている。

今回の売却案は、中国軍の威圧の阻止に不可欠な台湾の対艦、防空能力の向上を支援し「いかなる常態化の動きも容認しない」(米国家安全保障会議のカービー戦略広報調整官)姿勢を示す狙いがある。

議会では来月から、メネンデス上院外交委員長(民主)らが提案した「台湾政策法」案の審議が開始される。同法案は「人民解放軍による侵略」の抑止につながる防衛協力を規定。台湾を「NATO(北大西洋条約機構)非加盟の主要な同盟」の一員と正式に位置づけ、台湾の在米窓口機関「台北経済文化代表処」の名称を「台湾代表処」に変更することを盛り込んだ。米台関係をめぐり「79年の台湾関係法以来、最も重要な法律となる」(米紙ワシントン・ポスト)と注目されている。

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