止まらない物価の高騰が市民生活に大きな影響を与える中、東京都内の自治体が独自の支援策を打ち出している。総務省が26日に発表した東京23区の生鮮食品を除いた消費者物価指数は、8月中旬の速報値で前年同月比2・6%上昇。生活を支えるために、ポイント還元、事業者支援、米配布など、さまざまな取り組みが行われている。
世田谷区は、区内の店舗で使用できるキャッシュレス決済アプリ「せたがやPay」で、7月22日から利用額の30%がポイントとして還元される「せたがや全力応援祭」を始めた。キャンペーンは来年1月までの予定で、還元額の上限は7月22日から10月末までが1人当たり3万ポイント、11月から来年1月までが1人当たり4万ポイントとなる。区内の約2200店舗が対象で、還元されたポイントは1ポイントを1円分相当として利用できる。
せたがやPayを導入する同区の青果店「フルベジ太子堂村」の森明子代表(55)は「先月末と比較して、せたがやPayの利用金額は倍近くになっている」と話す。森さんによると、天候の影響もあり野菜全般が値上がりしているが、「(還元があることで)野菜を買いに来たお客さまが一緒に果物も買っている」とキャンペーンの影響を実感する。
実際にせたがやPayを利用して会計をしていた同区の主婦(73)は「還元があるので、普段は買わないものも一緒に買うようになった。大変ありがたい」と話した。
文京区では、8月15日から10月15日まで「文京ソコヂカラ 第2弾がんばるお店応援キャンペーン」を実施。キャンペーン期間中に割引やおまけなどの消費者向けサービスを実施する区内の中小事業者などに、サービスにかかる費用や高騰している原材料費などを計25万円を上限に補助する。既に区内の約320店舗が参加しており、同区の担当者は「長引くコロナ禍や物価高騰で大変な思いをしている事業者の方を支援するとともに、消費者の方にも恩恵を受けてほしい」と話す。
墨田区は、食費などの負担増が懸念される低所得の子育て世帯に対し、生活支援として子供1人につき10キログラムの米を配布する「子育て世帯生活支援追加支援事業」を開始。約3700世帯の約5800人が対象となる。対象となる世帯には、7月中旬から順次案内が送付され、申し込みの期限は来年3月末まで。
配布される米は、墨田区の友好都市、栃木県鹿沼市のブランド米「とちほのか」となる予定。区の担当者は「鹿沼市のご協力のおかげで、友好都市の農産物を区の事業で配布するという珍しい取り組みを実現することができた。少しでも子育て世帯の負担軽減につなげていきたい」と話している。
(長橋和之)