薬の情報、ネットで正しく ポータルサイト「ミルシル」開設

高齢者もスマートフォンで情報収集することが珍しくない時代、医薬品の情報をインターネットで検索する人が増えている。ただ、大量の情報の中には不確かな内容もあり、誤った情報によって健康被害が起きる恐れもある。医薬品の適切な使い方を啓発する「くすりの適正使用協議会」(東京)は4月、薬の情報を一元的に見られるポータルサイト「ミルシル」をオープン。協議会の俵木登美子理事長は「薬の情報といえば『ミルシル』と思ってもらいたい」と期待を込める。

閲覧月1000万超

くすりの適正使用協議会の俵木登美子理事長
くすりの適正使用協議会の俵木登美子理事長

「ミルシル」誕生のきっかけとなったのは、薬の作用や副作用など患者に必要な情報について製薬企業が作成し、協議会が平成9年から医療者に提供を始めた薬の情報「くすりのしおり」だ。当初は紙での提供だったが、15年にはインターネット上で一般にも公開を始め、医療機関で処方される医薬品の情報が検索できるサイトとなった。

協議会が令和2年に行ったインターネット調査では、医療機関で処方された医薬品について調べる場合、「ネットで調べる」と回答したのは57・5%(複数回答)と最多で、薬剤師に聞く(51・5%)、医師に聞く(51・4%)を上回った。

こうした現状を示すように、ネットの「くすりのしおり」は昨年、月平均の閲覧数が1000万を超えた。そのうち75%は一般からのアクセスで、約94%がグーグルやヤフーといった検索エンジン経由だ。

「ミルシル」はこの「くすりのしおり」を軸に、病気の説明や薬の使用上の注意文書など、薬に関する患者向け情報をひもづけ、一元的に見られるようにした。

スマートフォン版の「ミルシル」のトップ画面(イメージ)
スマートフォン版の「ミルシル」のトップ画面(イメージ)

その際に気をつけたのは、医薬品についての情報提供が「広告」にあたらないかどうかだ。医薬品を製造する製薬企業は、患者に直接、医薬品を宣伝することが、医薬品医療機器等法(薬機法)で禁止されている。「ミルシル」に掲載する情報は一般の人からも見られるため、製薬企業から提供される情報が広告に当たらないか、慎重に判断する必要がある。

一方で患者側からは、製薬企業が患者向けに作っている薬や病気、医療費制度などの冊子が手元に届いていないという声が上がっていた。協議会は厚生労働省にも相談し、これらの資材が広告に当たらないことを確認。一般向けの情報提供に慎重だった製薬企業と、自分が服用する医薬品や自身の病気の情報を知りたい患者側を結び付けた。

副作用情報も

医療現場では長らく、患者は医薬品の情報を知る必要がないと考えられてきた。しかし、現代では、患者や家族が納得して医療を受ける「インフォームドコンセント」など、患者主体の医療が中心になった。自分がどんな薬を飲んでいるのか、その薬にどういう効果があり、どういう副作用があるのか。患者自身が医薬品情報を知ることが重要になった。

がんの患者を対象に行った米国の研究では、副作用などの症状報告を患者から積極的に受けた場合と通常の対応をした場合では、報告があった方が生存期間が延びた。副作用に対して、適切な処置がとれたためと考えられる。「薬や副作用のことを患者さんが知ることは、寿命を延ばすことにもなる。医療者の方も、患者が感じた副作用を拾い上げる必要がある」と俵木理事長は解説する。

さらに、ネットで情報を提供する「ミルシル」には、最新情報がすぐ反映できるメリットもある。これまで製薬企業が制作してきた薬や病気についての冊子は品切れになることもあり、新たな情報を盛り込むにもタイムラグが生じていた。しかし、「ミルシル」は製薬企業から情報更新や修正の依頼があればすぐ対応できる。吸引薬など使用方法が難しい薬の使い方を教える動画なども提供でき、薬剤師がオンラインで薬の飲み方を教える「オンライン服薬指導」に使える可能性もある。「100歳時代」にふさわしい適切な医薬品情報の提供サイトとして、「ミルシル」はますます重宝されそうだ。(道丸摩耶)

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