「都心に最も近い」ラム酒蒸留所が始動 千葉・南房総

ラム酒作りに欠かせない蒸留器=千葉県南房総市(小野晋史撮影)
ラム酒作りに欠かせない蒸留器=千葉県南房総市(小野晋史撮影)

都心に最も近い国産ラム酒の蒸留所が千葉県南房総市に誕生し、15日に初蒸留を行った。原料となるサトウキビの生産から瓶詰めまでを一貫して行い、年明けにも初ボトルが発送される。飲食店や洋菓子店からは問い合わせが相次ぎ、台風被害やコロナ禍を乗り越えて目前に迫った最初の一杯は、地域再生への新たな景気付けとしても期待されている。

蒸留所の名前は「房総大井倉蒸留所」(同市千倉町南朝夷)。森の中にある隠れ家のような古民家を改装し、蒸留棟などを設けた。現在はたるを保管する熟成庫や一般見学者の試飲スペースなどを整備中だ。

ラム酒は、サトウキビの搾り汁に酵母を加えて発酵させた低アルコールの〝もろみ〟を蒸留して造る。国の酒類製造免許は7月に取得。蒸留後は数カ月かけて熟成させ、瓶詰めを行う。

事業を展開する「ペナシュール房総」(同市)の代表で飲食店を営む青木大成さん(48)は「想像以上に香りが高い。フルーティーで味も期待できる」と声を弾ませた。ペナシュールはフランス語で「半島」を意味する。

限定の初ボトルは「房総ラム・プロローグ」と命名。クラウドファンディングサイト「キャンプファイヤー」を通じて支援を募り、アルコール40度で360ミリリットル入りの小瓶を返礼品とする。10月初めにも募集を始め、年明けに発送する見通しだ。

一方、初の市販品はアルコール50度で700ミリリットル入りの瓶に詰め、来春の販売を目指す。

同時にたるでの熟成も開始。数年後には琥珀(こはく)色のラム酒が市場に出回る。

台風にも負けず

青木さんが生まれ育った同市の旧千倉町付近は、温暖な気候を生かして昔はサトウキビの栽培が盛んだった。そこでラム酒造りを思い立った青木さんに地元の古老が畑を提供。令和元年に房総半島台風が直撃しても元気に育っていたサトウキビを見て、「これならいける」と確信した。

コロナ禍による飲食店の営業制限で生まれた時間を奇貨とし、国の「事業再構築補助金」も生かしながら蒸留所を立ち上げた。

初めての農業で苦労はあったが、今ではサッカーのフィールド2面分の広さでサトウキビを栽培。収穫は年1回で、おおむね11月から翌年2月にかけて行う。1本の茎からは、ショットグラス1杯分のラム酒ができる目安だという。

さらにラム酒は飲むだけでなく、パウンドケーキなどの洋菓子にも使われ、既に業界から多くの問い合わせが来ている。

一方で青木さんが目を向けるのは、地域の活性化だ。ラム酒を飲食店などで出してもらうほか、鴨川地域で収穫されたレモンなど、地元の食材と組み合わせた新メニュー作りにも生かしたい考えだという。

付近には都心に最も近い沿岸捕鯨基地があり、「(郷土料理の)クジラのタレともよく合う」と青木さん。海外進出も視野に入れ、「国産ラム酒を通じ、房総全体が国内外に広く知られるように頑張りたい」と意気込む。(小野晋史)

ラム酒 サトウキビを原料とした蒸留酒。17世紀までに中米カリブ海に面した西インド諸島で生まれたとされ、海軍や海賊といった海の男たちが好んだ酒として知られる。アルコール度数は40~50度程度で甘い風味があり、蒸留後に何年かたるで熟成する場合もある。日本ではサトウキビ栽培が盛んな沖縄県や小笠原諸島(東京都)のほか、西日本で複数の蒸留所が開設されている。

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