(月刊「丸」・昭和63年6月号収載。筆者は陸軍通訳生)
六月、七月、八月、九月と私たち第二坑区の作業成績は上昇していった。収容所長、炭坑長、技師長、坑区長も大いに満足していたらしく、私たちにたいする態度も変わってきて、それこそ下にもおかぬといったようすだ。そして、各地でもやっていたのだろうが、高作業量を上げている兵隊から順次、「休養の部屋」(日本人のいうハラショー・ラボータの室)へ数名ずつ、約一週間ほど入れて休養させるという処遇をとった。
この部屋に入った者は、何もしなくてもよい。三食とも上げ膳下げ膳で美味な食事が提供され、殿様ぐらしというものである。