(月刊「丸」・昭和63年6月号収載。筆者は陸軍通訳生)
第二坑区に所属して地下で働いている日本兵のノルマは、毎日、個人別のノルマ遂行表が各ラーワ(採炭場、切羽)の職長から、坑区長のサインをえて、炭坑側に報告されることになっていたが、十一月末しめ切り分の成績表を持って、収容所長が大隊長と私を呼びつけた。
「見ろ、このノルマ表を。各人別に記入してあるが、坑内のザボイ(ラーワ)で働いている日本兵のノルマ遂行率は、この約半月で五十五パーセントだ。坑内作業員、とくにラーワで働く採炭夫のノルマにたいする炭坑側の支払い金額は重労働だからなるほど高いが、それでも五十五パーセントとはなんたることだ」