Wikipediaの記事が「司法判断に影響」、研究結果が示した“集合知”への依存の問題点

示された致命的な「証拠の誤謬」

いまでは記事の信頼性のなさでWikipediaが嘲笑されることは減った。しかし、その主な理由は、インターネットの“ほかの部分”が使い物にならない情報で溢れるようになったからだ。

とはいえ、Wikipediaも驚くような捏造記事の被害に遭っている。中国語版Wikipediaでは、何年も気づかれることなくロシアの歴史に関する偽記事を書いていた女性がいることが、このほど発覚したのだ。

Wikipediaは強い影響力を維持し続けている。地球上で7番目に訪問者数が多いウェブサイトであり、約650万件の記事が1秒間におよそ2回の頻度で更新されているのだ。

「非常に興味深い実験です」と、ジョージ・メイソン大学の歴史学教授のミルズ・ケリーは語る。ケリーは、虚偽の歴史について教えるために学生にWikipediaの記事を編集するよう奨励したことで知られている。

この研究は致命的な「証拠の誤謬」を示していると、ケリーは説明する。つまり、ある考えや理論を支持する証拠がたくさんあるからといって、それが真実である可能性が高いということにはならないのだ。

この論文では明らかになっていないが、Wikipediaの法律に関する記事が実際の判決に影響を与えたのかを知ることができれば、もっと興味深いとケリーは語っている。

求められる記事の質の担保

「これは非常に問題であると感じます」と、カリフォルニア大学マーセド校の司書で長年Wikipediaを研究してきたドナルド・バークレーは語る。バークレーは偽情報について書いた書籍『Disinformation: The Nature of Facts and Lies in the Post-Truth Era』の著者でもある。「法曹界は自身のあり方を見つめ直す必要があると思います」と、バークレーは言う。

ブリタニカ百科事典も歴史の見解について偏りがあるとバークレーは指摘した上で、Wikipediaは「とても充実した資料」であると形容している。一方で、Wikipediaには多くの人が投稿しているので、「信憑性のない情報を投稿したり、宣伝に使ったりする人がいる点には注意しなければなりません」と、バークレーは語る。

裁判官やその他の法律の専門家がWikipediaを使い続ける可能性は高い。そこで、法律家がWikipediaに投稿される記事の質を保つことに力を入れる必要があるかもしれないと、今回の研究を主導した研究者は指摘している。

Wikipediaのコンテンツの質を高めるために専門家を集めて内容を編集する「Edit-a-thon(編集マラソン)」を開催することが有効かもしれないと、メイヌース大学の講師で今回の論文の共著者のひとりであるエダナ・リチャードソンは提案する。

なお、Wikipediaの利用は裁判にまつわる仕事量が多すぎた結果であることを示す証拠も、研究者たちは見つけている。Wikipediaの記事の引用を含む法的判断は下位の裁判所で最も多く見られたのだ。これは裁判官の過労を示しているのではないかと、研究者たちは推察している。

(WIRED US/Translation by Nozomi Okuma)

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