加速するテック業界のオフィス縮小が、世界各地の地域経済にもたらす影響の深刻度

「今回のパンデミックによって、多くの企業でリモートワークが大いに実現可能なものであることが示されました。さらに、多くの従業員がリモートワークを好み、それにより生産性も高まることが示されたのです」と、Green Streetのイスマイルは語る。その影響は一般労働者だけでなく、経営陣の上層部にまで及んでいる。

経済紙『フィナンシャル・タイムズ』は8月2日、インスタグラムの代表であるアダム・モセリがカリフォルニア州にあるメタ本社から離れ、ロンドンに拠点を移す予定だと報じた。モセリはメタのほかの同僚たち、例えばシェリル・サンドバーグの後任として最高執行責任者(COO)に就任してからスペインで過ごすことが増えたハビエル・オリバンや、イスラエルに移住予定だったインテグリティ担当副社長のガイ・ローゼンに続くことになる。

不動産アドバイザーのジョーンズ ラング ラサール(JLL)で都市未来・グローバルインサイト担当責任者を務めるフィル・ライアンによると、多くの巨大テック企業が自社がもつオフィスを縮小する。一方で購入を続ける企業もあるなど、市場は混沌としているという。

オフィスを購入する事例を挙げると、巨大テック企業が伝統的に拠点を設けてきた沿岸部ではなく、アリゾナ州フェニックス郊外のような内陸部へと進出するケースが多く見られる。一方でライアンは、一部の大企業の間ではオフィススペースの“合理化”が進んでいることも認めている。

「多くの企業、特にサンフランシスコのベイエリアを拠点にする企業は、特定の都市圏に複数拠点をもっている場合が多いのですが、こうしたスペースを統合しようとする傾向にあります」と、ライアンは指摘する。

特にサンフランシスコ市内では拠点の統合が進んでおり、かつて市内にいた労働者の3人に1人がリモートワークに移行したとロンドン・ブリード市長は見積もっている。JLLによると、サンフランシスコのオフィス空室率は22年第1四半期末の時点で22%に達した。また、ほかのテック企業が拠点を設けているテキサス州ダラスでも、オフィススペースの4分の1以上が空室となっている。

地域経済に大きな影響

この問題は、米国内外の広範囲にわたる不動産市場に多大な影響を及ぼしている。イスマイルとライアンによると、テック企業はオフィススペースにおける全業務の5分の1から4分の1を占めているという。こうした企業が去ることで、大量のオフィススペースが空室となり、そうしたオフィスを支えることを念頭に築かれた都市やサービスにも影響が及ぶことになる。

「雇用自体を考えても、地域経済に大きな影響を与えることになります」と、イスマイルは指摘する。「テック関連の仕事は、それにかかわるオフィス関連の雇用を生み出す傾向にあります。このため多くのオフィス市場にとって、テック分野が堅調であることは非常に重要なのです」

企業が撤退すれば街の活気は失われ、その影響は観光、飲食から娯楽に至るまで、あらゆる業界に波及するだろう。CompTIA(コンピューティング技術産業協会、コンプティア)の分析によると、テック業界はカリフォルニア州だけで5,160億ドル(約69兆円)の経済効果を上げている。また、全米では340万人がテック業界に雇用され、ソフトウェア開発やネットワーク設計に従事するテクノロジー専門家を支えているという。

ツイッターはオフィス移転が雇用に「影響しない」と説明しているが、それはあくまで真実の一部でしかない。清掃員、警備員、ケータリング業者など、オフィスワーカーを支えるあらゆる人々が損失を被ることになるからだ。

「わたしが懸念しているのは、“スマート”な人たちがハイブリッドワークをうまく機能させる方法を考え出せていないということです。ほかの場所ではうまくできているようですから」と、報道機関への発言が禁じられており匿名で取材に応じたツイッターの従業員は語る。「最もダメージを受けるのは、職場に人材を集めるための福利厚生を担っていた人たちなのです」

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