失職前市長と議会対立で泥沼化 東京・あきる野市長選28日告示

あきる野市役所前に設置された市長選のポスター掲示板=26日午後、東京都あきる野市(末崎慎太郎撮影)
あきる野市役所前に設置された市長選のポスター掲示板=26日午後、東京都あきる野市(末崎慎太郎撮影)

東京都あきる野市の村木英幸前市長(65)が市議会から2度の不信任決議を受けて失職したことに伴う同市長選は、28日に告示される。特別養護老人ホームの整備を巡って、市長と市議会との対立が泥沼化した同市では、市議選が7月に行われたばかり。市民から「選挙疲れ」の声も聞かれる中、村木市政の是非が改めて問われる選挙となる。

市長選に立候補を表明しているのは、無所属で出馬する村木氏のほか、無所属新人で元市議の中嶋博幸氏(55)=自民、公明推薦▽無所属新人で建築設計会社役員の木下優氏(73)▽共産新人で同党地区委員長の数野一氏(74)-の計4人。

村木氏は令和元年10月の市長選に無所属で出馬。自民、公明推薦の現職を88票差で下し初当選した。選挙戦では共産などの支援を受けたが、今回は共産も対抗馬を擁立している。

村木氏と議会との溝が決定的に深まったのは、特養整備を巡る問題だ。

村木氏は選挙公約で特養の整備を掲げていた。しかし、市の介護保険事業計画(3~5年度)の策定委員会では介護人材の確保を優先すべきだとして、「新たな整備は行わない」との判断を示した。

これに対し村木氏は、市の事業計画を「需要の増加に備える必要があり、事業者から申出があった場合は、整備に着手できる」などと修正。「高齢化社会を見据えた政策だ」と事業を断行する姿勢をとった。

議会は昨年3月、市の事業計画決定を受けて特別委員会を設置。同年7月には、市有地である施設用地の貸与や売却には議会の議決を必要とする条例を定めた。ところが村木氏は今年4月、市の広報紙で運営事業者の募集を独断で行った。

これに共産を含めた議員の大多数が反発。「議会との対話がまったくない。これ以上、市長を任せられない」(共産市議)との声が高まった。

議会は6月、議員の9割以上の賛成で1度目の不信任決議を可決。村木氏は地方自治法に基づき議会解散を選択し、7月に市議選が行われた。選挙後の議会でも21人中19人の賛成多数で不信任決議が再可決され、市長失職に至った。

今回の市長選に向けて、元自民市議で6月の不信任決議可決時に議長だった中嶋氏は「市政の安定化」を訴える。市長与党にありながら一連の不信任決議で賛成に回った共産市議団は、「選択肢を示す責任がある」と独自候補擁立の理由を述べた。木下氏は「議会との対話がない市政は問題だ」と主張している。

一方の村木氏は、これまでの議会の対応について「市長の執行権を侵害している」と訴え、今月16日付で不信任決議の取り消しを求め東京地裁に提訴した。

泥沼化する市長と議会の対立の中で行われる市長選。7月24日投開票の市議選の投票率は過去最低の46・07%に落ち込んでおり、わずか1カ月後の市長選に選挙疲れの指摘や、「まったく関心はない」と冷ややかな声も市民からは聞かれる。自営業の男性(63)は「これまでの政治のいざこざをここで解消してほしい。しっかり考えて投票しなければ」と話した。

投開票は9月4日に行われる。選挙人名簿登録者数は6万7500人(7月16日現在)。(末崎慎太郎)

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