北朝鮮による日本人拉致被害者救出を願うブルーリボンの着用を宣言する超党派の政治家有志が今月、「ブルーリボンを守る議員の会(議員の会)」(会長・小坪慎也福岡県行橋市議)を設立した。拉致問題に取り組んできた安倍晋三元首相が死去したことで、問題が停滞することを防ぐ狙いがある。26日時点で全国の地方議員を中心に約140人が賛同しており、同会は今月中に300人以上を目指す。
議員の会は、各都道府県の地方議員単位や国会議員のみで構成される既存の「拉致議連」とは異なり、全国の地方議員を中心に首長や国会議員が隔てなく参加。活動内容は議員のブルーリボンの着用の促進に特化しているのが特徴だ。
立ち上げにあたり、同会は共同声明を発表。拉致問題について「単に拉致被害者の人権侵害というだけではなく、日本の国家主権の侵害の問題」とした上で、ブルーリボンは「拉致被害者救済活動の象徴的な存在」と強調し、「覚悟をもって着用する」と宣言している。
きっかけの一つに、7月に安倍氏が奈良市内で演説中に銃撃されて死亡した事件がある。拉致被害者家族を中心に、拉致問題の停滞を危惧する声が広がったからだ。
今月11日に開かれた大阪拉致議連の総会では、「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)」の西岡力会長が、政治家のブルーリボン着用について「(拉致問題の解決に向けた)一層強い意思を示すため、内外に示していただきたい」と呼びかけていた。総会に出席していた小坪氏は「拉致問題の沈静化を危惧する国民の閉塞(へいそく)感を打破したい」と、拉致問題に取り組む議員らに呼びかけ、議員の会を立ち上げた。
今後は地方議員や国会議員、首長などに幅広く賛同の輪を広げる予定で、超党派の大阪府内の地方議員有志による「大阪拉致議連」加盟議員も参加する見通し。小坪氏は「ぜひ自分の住む街の議会に賛同を呼びかけてほしい」と訴えている。
長年、北朝鮮による拉致被害者救出のシンボルとなってきたブルーリボン。着用することは国民の拉致問題に対する意識を高める一方、北朝鮮に対するアピールにもなる。ただ、議員間でも着用にはばらつきがあるのが実情だ。
ブルーリボンは、日本と北朝鮮を隔てる「海」と、両国をつなぐ「空」をイメージ。救う会によると、平成14年に拉致被害者5人が帰国する直前、救う会のメンバーが中心になって提唱し、ブルーリボン運動が始まったとされる。
だが、年月がたち拉致被害者家族の高齢化や問題の風化も懸念される中、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)」と救う会は昨年11月、拉致被害者の救出の意思を国内外でアピールする必要性が高まっているとして、全国の首長や地方議会、全国会議員に、「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」の期間中(12月10~16日)にブルーリボンの着用を求めた。
これを受け、東京都議会では小池百合子知事ら都幹部や警視総監、大阪府議会でも吉村洋文知事ら府幹部、府警本部長が着用したほか、岸田文雄内閣でも全閣僚が着用して閣議に臨んだ。一方で、全議員が着用しているわけではなく、外相経験者にもかかわらず平時は着用していない議員もいる。
今回立ち上げた議員の会ではそうした議員にも着用を呼びかけていく構えで、救う会の西岡力会長は「党派を超えた議員がブルーリボンを着用し、拉致問題が政治的立場によるものではなく人権問題だと示してもらうことで、日本中が拉致問題を忘れていないということを北朝鮮に訴えることができる」と評価している。
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ブルーリボンは、拉致問題に取り組む関連組織に申し込めば購入できる。
救う会は、定番の形のピンバッジに加えて、ちょう結びのバッジも1個500円で2個から販売。救う会ホームページに記載の案内に従い、郵便振替を使った振り込みや銀行振り込みを利用して申し込む。
また、大阪市など複数の自治体では、ブルーリボンを手作りする手順をホームページで案内している。
(尾崎豪一)