第167回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の贈呈式が26日、東京都内で開かれ、「おいしいごはんが食べられますように」で芥川賞に選ばれた高瀬隼子さん(34)と、「夜に星を放つ」で直木賞を射止めた窪美澄さん(56)にそれぞれ賞が贈られた。
「私は小説を読むことで救われてきました」と話したのは芥川賞を受けた高瀬さん。「『これを苦しいと思っていいのだ』と教えられる仕方で救われたこともあれば、『あのことを幸せだと思っていいのだ』と物語を通して肯定されたこともあります」
これまでの歩みをそう振り返った高瀬さんは「(今は)眠れない夜に私の小説を読んだ人が存在するのだ-と考えることが私を救ってくれるようになった。こんな幸福はありません」と述べた上で、「この感謝は書き続けることでしかお示しできない。覚悟を持って小説と向き合い続けます」と力強く宣言した。
一方、直木賞の窪さんは「コロナとか東日本大震災とか、私は今起こっていることをすぐに書いてしまう。でも身近にいる人の出来事をそのまま小説に書くことはありません」とスピーチを切り出した。その珍しい例外が、受賞作である短編集「夜に星を放つ」の中で、父親の再婚相手との関係に悩む小学生を描いた最終話「星の随(まにま)に」だという。窪さんはコロナ禍の中で言葉を交わし作品のモデルにした男の子の泣き顔を回想しながら、「コロナ禍が長引くと、そのひずみは弱い人たちにいく。女性や子供、非正規雇用の若者たち、日本に住む外国の方たち…私という作家の目はどうしてもそういう方たちを見ずにはいられない」と変わらぬ健筆を誓った。