美村里江のミゴコロ

岩手とアイスランド

美村里江さん
美村里江さん

先週に続いて羊がテーマだが、スーダン北東部の港からサウジアラビアへ向かう船に起きたショッキングな事件を知った。

報道によると今年6月、羊の積載上限9千匹のところ、1万5800匹も載せていたため沈没。助かったのは約700匹のみで、商いの強欲から起こった気の毒な話。欲張りが全てを失うという、どこか童話的な悲しいニュースだった。

およそ400万ドル分の羊を惜しく思いつつ、また別に羊にまつわる2つの食の話を思い出した。

1つは、以前夫婦で数日間滞在した岩手県遠野市である。それを目当てに行ったわけではなかったが、羊のおいしいお店が多いのだ。ある料理人が中国に出兵し、現地で感激した羊料理を故郷の遠野に帰って広めたという説があるらしい。

毎日ランチタイムに千円程度で食べられるラムジンギスカンや、マトンハンバーグを堪能。羊に縁のなかった夫は「こんなにおいしいんだ」と驚き、痩せの大食いを発揮。毎食2人前を食べていた。

食後はドライブで、柳田國男の『遠野物語』の世界を走った。夕方になると西の山間から真っ赤な夕日がさし、ススキの生い茂る平野を強風が吹き抜けるとなんとも雰囲気のある場所。また行きたいねと夫と話している。

もう1つは未経験の羊である。アイスランドを舞台にした入江亜季さんの漫画『北北西に曇と往け』を読み、絶品らしい「アイスランドの羊」に憧れている。

内容も大変面白く、美しい風景とともにアイスランドという国の魅力にくぎ付け。特に主人公・慧(けい)の親友、清が日本から遊びに来て雄大な名所案内を受ける2巻は、一緒に観光している気分で何度も読み返している。

ともに活火山を有する国だが、複数のプレートが沈み込む日本界隈(かいわい)と、新たなプレートが生まれていくアイスランド周辺は双対の存在。いつか訪れて壮大なスケールを体感してみたいものだ。

新しい大地は土を蓄えておらず、日照時間の関係や強風で大きな植物は育ちにくい。そんな広大な荒野で、柔らかなコケやハーブだけを食べて育った羊は絶品、というわけである。

「日本人にとっての米だな」と、肉好きの主人公が評する味。いつか現地で食べてみたいと思う。

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