【ニューヨーク=平田雄介】国連本部で開催中の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、核軍縮を扱う第1委員会が21日までに示した素案に、核保有国に「核の先制不使用」を求める文言が入った。核保有国が「敵からの核攻撃に反撃する場合を除き、核兵器を使用しない」と宣言する政策で、米国の拡大抑止(核の傘)に依存する日本は安全保障上の懸念を踏まえて慎重に交渉している。
核の先制不使用は、米国のバイデン政権がロシアのウクライナ侵攻が始まる前に検討したが、中国や北朝鮮、ロシアが通常兵器、生物・化学兵器の使用や侵略的な行動を躊躇(ちゅうちょ)しなくなる恐れがあるため、同盟国が翻意を促した経緯がある。
素案への書き込みは中国や複数の非保有国の要請によるもの。第1委員会の補助機関が作成した報告書には、核保有国に加え「非保有の同盟国が対策を取ることで合意する」との記述もあった。日本などの不同意を受け、この記述は素案には反映されなかったが、26日に予定される最終文書の採択へ向けて議論は続く見通しだ。
素案は、核保有国が非保有国に対して核兵器を使用したり、核を使用する威嚇を行ったりしないと約束する「消極的安全保障」に法的拘束力を持たせる取り組みも促す。核保有国のロシアが非保有国のウクライナを侵攻したことで関心が高まった。
日本は消極的安全保障の強化に賛成の立場だが、NPTの下で「非保有国」として扱われる北朝鮮の挑発行為が活発化することを警戒している。北朝鮮はNPTからの脱退を一方的に宣言しているが、手続きに疑義があり、加盟国は脱退を認めていない。日本はNPTを順守しない国が消極的安全保障の対象とならないよう働きかけていく。
不拡散を扱う第2委員会は21日素案を改訂し、露軍が占拠したウクライナ南部ザポロジエの原子力発電所に関しウクライナ当局の管理復活を求めた。初めてロシアを名指しで批判した。
ロシアは名指しのない段階でも、原発を巡る表現は「受け入れられない」としていた。今回の改訂で反発を強めるのは必至だ。