速報

速報

日本、先制点許す

12気筒は合理を超えたところにある 新型ベントレー・ベンテイガ・スピード試乗記

「ベンテイガの衣をまとった怪物」

試みに右足を深々と踏み込むと、ぐおおおおおおおっというW12気筒が快音をひかめに轟く。2000rpmを超えるとピョンとジャンプし、3000rpmを超えると、月に向かって飛び立つように加速する。みるみる先行車に近づく。ブレーキを踏む。交通安全の標語が浮かぶのはこのときである。「飛び出すな。クルマは急に止まれない」

車両価格は3356万円。オプションが360万円ほどおごられたテスト車は3720万4960円というプライス・タグをつけている。国産のコンパクトSUVだったら10台、筆者が8年前に60万円で買った中古のルノー「ルーテシア」だったら、62台とお釣り少々に匹敵する価格である。62台もあったら、困っちゃうよなー、駐車スペース。ベンテイガ ・スピードだったら、駐車場を1台確保するだけでよいのだから、お金のつかい方としては効率がよい、といえる。

まったくもって浮世離れしている。この浮世離れしたベントレーが2021年は世界中で飛ぶように売れた。昨年のベントレーの総販売台数は過去最高の1万4659台で、前年比37%増。日本も同30%増の596台に達したという。

ベンテイガに限ると、昨年の国内の販売台数は258台で、ベントレーの43%を占めていた。このうち12気筒のスピードはわずか28台だった。つまり、ベンテイガのほとんどがV8で、12気筒は1割に過ぎない。V8は2280万円と、12気筒とは1000万円以上の開きがあることにくわえ、V8で性能的には十分、バランスという意味ではむしろ12気筒以上かもしれないのだから、合理的判断としては正しい。

ベンテイガ・スピードは合理を超えたところにある。「まぼろしのベンテイガ」、あるいは「ベンテイガの衣をまとった怪物」と呼ばずして、なんと呼ぶべきや。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

会員限定記事会員サービス詳細