「江戸っ子」じゃなく「福島出身」だった トウキョウサンショウウオ改めイワキサンショウウオ 福島で展示

アクアマリンふくしまに展示されているイワキサンショウウオ。個体によって色が違い個性的だ=福島県いわき市(芹沢伸生撮影)
アクアマリンふくしまに展示されているイワキサンショウウオ。個体によって色が違い個性的だ=福島県いわき市(芹沢伸生撮影)

〝江戸っ子〟だと思っていたら、実は〝福島出身〟だった⁉ これまで「トウキョウサンショウウオ」に分類されていた、茨城県北部と福島県いわき市周辺に分布するサンショウウオが、新種として研究者に認められた。7月に「イワキサンショウウオ」と名付けられ、今月から〝ご当地〟のアクアマリンふくしま(福島県いわき市)で展示が始まった。

トウキョウサンショウウオは、群馬県を除く関東地方の1都5県と福島県の一部に生息している。京都大の研究者グループは、遺伝子や体の形の違いから、茨城県北部と福島県南部に生息するものを新種とし、学術誌に論文が掲載された。

アクアマリンふくしまに展示されているイワキサンショウウオ=福島県いわき市(芹沢伸生撮影)
アクアマリンふくしまに展示されているイワキサンショウウオ=福島県いわき市(芹沢伸生撮影)

トウキョウサンショウウオは、標高300メートルほどの丘陵地の森林などに生息する日本固有の両生類。全長80~130ミリで、体色は黄色味の強い褐色や黒色などさまざま。繁殖期にだけ田んぼや池、水路など、規模が小さく流れのない水辺に姿を見せる。繁殖期以外、目にすることはほとんどないという。

近年、住宅地や道路、ゴルフ場などの開発、里山の荒廃や耕作放棄地の増加などから、産卵に適した場所が減少。アメリカザリガニなど外来種に捕食される被害も深刻になっている。さまざまな要因によってトウキョウサンショウウオは減り続け、環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定されている。

一度、崩れた生息環境を元に戻すのは容易ではなく、個体減少に歯止めをかけるのは難しいのが現状。イワキサンショウウオも、生態や危機的な状況は同様とみられている。

アクアマリンふくしまに展示されている3匹のイワキサンショウウオ。個体によって色が違い個性的だ=福島県いわき市(芹沢伸生撮影)
アクアマリンふくしまに展示されている3匹のイワキサンショウウオ。個体によって色が違い個性的だ=福島県いわき市(芹沢伸生撮影)

アクアマリンふくしまでは3匹を展示している。雌雄は不明で全長100ミリ程度。全身が黄色系の褐色のもの、黒っぽいもの、頭と胴が黒く尾の部分が黄色味がかった褐色のものなど個性的で、いずれも斑点がある。

暗い水槽の中でほとんど動かずにいるが、黒いつぶらな瞳で岩に張り付く姿は愛嬌(あいきょう)たっぷり。訪れた親子連れは足を止めて、興味深そうに観察していた。

アクアマリンふくしまに展示されているイワキサンショウウオ=福島県いわき市(芹沢伸生撮影)
アクアマリンふくしまに展示されているイワキサンショウウオ=福島県いわき市(芹沢伸生撮影)

アクアマリンふくしま飼育展示部の専門技師、吉村光太郎さん(44)は「自分の知る限り『イワキ』が冠についた動物は初めて」といい「この展示がきっかけになり、訪れた人が地元の自然について考え『自然を守ろう』という機運が高まってくれれば」と話していた。(芹沢伸生)

会員限定記事会員サービス詳細