野球カードとNFT~Coinbase代表が語るクリプトの役割と可能性

VCってお金儲けという点で揶揄されるかもしれませんが、あの人たちの議論を見ていて面白いのは、「自分たちで信じていることがあり、その信じていることに従って議論をふっかけている」という点です。そこからは、自分だけが儲けてやろうという思惑を感じません。何がいいのかをみんなで議論し、ぼくたちユーザーに選択肢が与えられ、最終的に何が残ったのか……というところに行き着くことがベストシナリオだとするならば、影響力をもつ人たちによる議論は、そこに至るまでの不可欠なプロセスだと思っています。

一部のコミュニティだけがドライブする─例えばレギュレーターだけが枠組みを決めるといったことになると、話は面白い方向に進まないはずです。『レディ・プレイヤー1』のように「ひとりの聖人君子によってつくられた世界」というのは、実社会ではなかなか難しい。効率性の追求ではなく、技術的なフィージビリティや社会的な意義といったことを、既存のステークホルダーの要望も加味しながらみんなで試行錯誤していくことで、よりいい方向に向かっていけるのかなと思います。

その意味では、みんなで玉転がしをやっているイメージです。みんなゴールに向かっているけれど、ちょっと変なところに行きそうになったら誰かが押し返すぐらいの話で、ぼくらも含めて、誰かひとりで転がしているという話ではない気がします。

重要なのはリアル社会とのハーモナイゼーション

ぼくらは、自分たちのサービスを通じてクリプトエコノミーとリアル社会の接点をつくること、いうなればハーモナイゼーションが大事だと思っています。ぼくらは決して「サイファーパンクだけのノアの方舟をつくろうぜ! 」とは思っていません。ノアの方舟をつくるのならコンプライアンスも何も関係ありませんが(笑)、「こうしたレギュレーションがある地域にCoinbaseとしてのクリプトエコノミーをしっかりもっていくためには、こういう法律と付き合う必要がある」といったことをキチンと認識してハーモナイズしていかないと、できるものもできません。くり返しますが、クリプトコミュニティにとってリアル社会との接点をもつことは、それだけ重要な観点です。

とりわけ日本の場合、過去に大きなハッキングが幾度か起き、社会問題となりました。そうした状態からクリプトというものを再びポジティブな方向にもっていくにあたっては、先行する方々による不断の努力がありました。後続する立場として、そこには最大級の敬意をもっています。そのうえで、ぼくたちがクリプトエコノミーの核心だと考えているサービスを、ぜひ日本で享受できるようにしていきたいと思っています。

22年3月時点において、日本でCoinbaseが提供できるのは「資産の交換」のみです。当然、資産を増やすことは最重要課題だと捉えているので、暗号資産のマーケットプレイスとしての役割は、今後もどんどん機能を充実させていく予定です。そうしないと、「ビットコイン買った? 」という話で終わってしまいますからね。

ただ、一つひとつのクリプトアセットがもっている社会的な意義を知っていただき、かつ、ユースケースを提供するところまでがぼくたちの役割だと思っています。まずは法令の許す限り─それこそハーモナイゼーションが大事なのですが─ウォレットやDApps(分散型アプリ)をやりたいと思っています。

ここでいうウォレットをもう少し具体的にいうと、「セルフ・ホステッド・ウォレット(自己管理型ウォレット)のソフトウェア」ということになります。ちなみに一般的な定義でウォレットを大別すると、3つに分けられます。ひとつは、交換業者のような信託した第三者に秘密鍵も含めて預けて、「あとはよろしくね」というタイプ。ふたつめが、ハードウェアウォレットと呼ばれる自分で物理的に管理するタイプ。3つめが、その中間にあるセルフ・ホステッド・ウォレットです。「ウォレットの管理をそれなりに簡単にしますが、鍵の管理は自分でやっていただくことになるので、そこは注意してくださいね」といった、いわばデジタルとフィジカルのハイブリッドで管理するタイプで、ぼくたちはそのサービスの提供を前提に準備を進めています。

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