のれんを守る

亀屋(埼玉県川越市)「上物主義」貫き新作和菓子も

創業時から変わらぬ場所で営業を続ける亀屋本店。重厚感あふれる蔵造りの建物は埼玉県川越市の指定有形文化財となっている=埼玉県川越市(中村智隆撮影)
創業時から変わらぬ場所で営業を続ける亀屋本店。重厚感あふれる蔵造りの建物は埼玉県川越市の指定有形文化財となっている=埼玉県川越市(中村智隆撮影)

「蔵造りの町並み」で知られ、「小江戸」と呼ばれる埼玉県川越市を代表する和菓子店が「亀屋」だ。天明3(1783)年の創業以来、どら焼きや最中など、材料と製法にこだわった上質な和菓子で多くのファンを惹(ひ)きつけている。関東屈指の観光地である川越の発展を牽引(けんいん)してきた地域の〝顔〟でもある。

江戸時代後期に現在の本店の場所で創業した初代の山崎嘉七が掲げたのが、品質に一切の妥協を許さない「上物主義」だ。この姿勢は大いに支持され、3代目嘉七の時には川越藩に御用商人として認められた。

新商品の開発にも積極的で、5代目嘉七は明治31年にサツマイモを薄く切って焼いた「初雁焼」を考案、川越名物の「芋煎餅」の元祖になったとされる。6代目嘉七は昭和2年に亀甲型で一口サイズの「亀の最中」を生み出し、現在も看板商品となっている。

亀屋の看板商品の最中「亀の最中」と、どら焼き「亀どら」。材料、製法にこだわった「上物菓子」だ=埼玉県川越市(中村智隆撮影)
亀屋の看板商品の最中「亀の最中」と、どら焼き「亀どら」。材料、製法にこだわった「上物菓子」だ=埼玉県川越市(中村智隆撮影)

現在の8代目である山崎嘉正社長も、看板商品の一翼を担う亀甲型のどら焼き「亀どら」を開発した。9代目となる山崎淳紀さんは「小豆の産地にこだわるなど『上物菓子の亀屋』を貫き、その上で時代に合わせて新たな商品を生み出してきた。それはこれからも変わらない」と力を込める。

亀屋は川越の顔役も務める。4代目嘉七だった山崎豊さんは明治11年に県内初の国立銀行「第八十五国立銀行」の頭取に就くなど地域経済活性化に尽くした。昭和57年には日本画家の橋本雅邦の作品を展示する「山崎美術館」を開館し観光客らを楽しませている。

亀屋は名実ともに川越になくてはならない存在となっている。淳紀さんは、「(菓子作りの手を抜くなど)後ろ暗いことは絶対にやらない。200年やっていようが300年やっていようが、信頼は一日で失われてしまう」と老舗の〝責任〟を強調した。(中村智隆)

亀屋へのアクセス
亀屋へのアクセス

亀屋】 天明3(1783)年創業。看板商品の最中「亀の最中」は1個108円、どら焼き「亀どら」は同249円。埼玉県川越市内に市指定有形文化財でもある本店(埼玉県川越市仲町4の3)など9店舗、ほか同県内に4店舗を構える。【問】0120・22・2051。

何代にもわたって伝統を受け継ぎ、日々新たな挑戦を続ける店や企業が多く存在する。歴史あるのれんを継承する各地の老舗を紹介する。

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