円安で加速、国内ゲーム市場「三重苦」 PS5転売で不足、ソフト売れず、人材流出

海外でも人気があるPS5
海外でも人気があるPS5

国内ゲーム市場に危機が忍び寄っている。円安でゲーム機の海外転売の勢いは収まる気配がなく、国内での普及を妨げ、ソフト販売も不振が表面化している。海外ではインフレでゲーム開発人材の賃金が高騰し、日本人開発者の流出懸念も高まる。ゲーム機・ソフト・開発人材それぞれの不足による〝三重苦〟が市場の衰退を招きかねない事態となっている。

「抽選販売応募は、『PS5本体当選分をご購入時にPS4本体をお売りいただける方限定』」

ゲーム機などを販売する「ゲオ」の店舗内で告知された、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の新型家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)5」の販売条件が話題となっている。運営元のゲオホールディングスは、22日以降のPS5の抽選販売で、旧型の「PS4」の買い取りを条件にすることを決めた。

ゲームショップなどは、転売対策としてあらかじめ外箱に「開封済みシール」をはりつけて販売する。会計後にその場で箱を開封するとともに、シールのはがれを防ぐ措置を行う。ただこれも決定打になっておらず、PSユーザー全体の底上げにはならないPS4と交換という苦肉の策を取らざるを得なくなっている。

転売が発生する原因は供給量の不足だ。主要部品である半導体の世界的な不足に加え、SIEの海外市場強化も背景にある。

ソニーグループが5月に開いた事業説明会では、PS4の国内稼働台数は米国に次いで世界2位であるのに対し、PS5は市場規模に劣る英国より下の3位となっていることが明かされた。日本へのPS5の供給は市場規模に見合っていない。

ゲーム市場はゲーム機を割安で販売し、ソフトで稼ぐ。ゲーム機の普及が進まなければ、その影響は業界全体に及ぶ。東洋証券の安田秀樹シニアアナリストは「ゲーム機は販売開始から(行き渡る)3年目が最も勢いがあるといわれる。ソフト会社がそれに合わせて開発するが、現状では止まっている」と指摘する。

さらに追い打ちをかけるのが円安だ。転売先の多くが米国、中国など海外とみられている。日本でのPS5の販売価格は約5万円。米国での販売価格は1ドル=100円換算で約499ドルに設定された。それが円安進行で日本では現在、約370ドル(1ドル=135円換算)で購入できる計算だ。日本で手に入れたPS5を米国の設定価格で売れば、約130ドル(約1万7500円)の差額が生まれる。

転売対策でゲオはPS4の買い取りを条件にPS5を抽選販売する=東京都内(高木克聡撮影)
転売対策でゲオはPS4の買い取りを条件にPS5を抽選販売する=東京都内(高木克聡撮影)

円安で割安感が増すのはゲーム機だけではない。日本人ゲーム開発者も引き抜きやすくなる。KADOKAWAのゲーム子会社、フロム・ソフトウェア(東京都渋谷区)が1300万本超えのヒット作「エルデンリング」を生み出すなど、日本のゲーム開発力は高く、注目されている。

国際的なインフレで海外での人件費が高騰する傾向もあり、これを魅力に資金力のある米中勢が日本人開発者を買い集めれば国内のゲーム産業は空洞化する。安田氏は「かつてない危機を迎えている」と警鐘を鳴らす。ゲーム開発者は、ITにたけたデジタル人材でもある。ゲーム産業の衰退は日本の社会課題であるデジタル化にも影を落とすことになりかねない。(高木克聡)

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