【ソウル=時吉達也】北朝鮮が非核化交渉に臨めば積極的に経済支援する方針を韓国政府が示したことに対し、金正(キムジョン)恩(ウン)朝鮮労働党総書記の妹、与(ヨ)正(ジョン)党副部長は19日に発表した談話で、「愚かさの極致だ」などと述べ拒絶する姿勢を示した。朝鮮中央通信などが報じた。
与正氏は韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が15日の演説などで発表した対北支援構想について、「非核化」を前提とするのが誤りだと主張。尹氏について「本当に無邪気で、まだ幼いなと感じた」などと述べたほか、「政策を評価する以前に、尹錫悦という人間そのものが嫌いだ」と露骨な個人攻撃にも及んだ。
また、与正氏は17日に北朝鮮が発射した巡航ミサイルについて、発射地点は韓国軍当局が発表した平安南道(ピョンアンナムド)・温泉(オンチョン)ではなく、100キロ近く離れた安州(アンジュ)市だったと主張。「発射時間と地点一つまともに明らかにできないのか」と韓国の情報収集能力を揶揄(やゆ)した。
与正氏の談話は、北朝鮮住民が日常的に接する党機関紙、労働新聞やテレビのニュースでも報じられた。
一方、北朝鮮の対外宣伝サイト「わが民族同士」も19日、尹氏の大統領就任から100日が経過したのに合わせた論評を発表。尹氏が「民族の千年の宿敵である日本との『関係改善』に没頭」していると批判した上で、対日外交への積極的な姿勢について「主人に蹴られながらも躍起になって追いかける犬のようだ」などと表現した。