朝晴れエッセー

涼を聴く。・8月19日

ある夏の夜―。つい最近のことだ。風呂から上がった私は、自室にて昼間の疲れを癒(い)やしていた。ピッ、とエアコンを作動させ、そして冷蔵庫から取り出したばかりの水を飲み、火照った体を冷ましていく。ふぅ、と思わず息がこぼれる。

「あっついなぁ…」。最近の口ぐせはもっぱらコレだ。本当に暑くてかなわない。湿気も多いし風も生ぬるい。私たちを蒸し焼きにでもするつもりなのだろうか。

そんな夏の私に味方してくれるのは、エアコンという寡黙で従順な相棒と、風呂上がりの冷水である。腹の奥底にたまっている日々のイライラをきれいに洗い流してくれる気がするのだ。その日もそうだった。

「寝るか…」。部屋の電気を消そうとイスから立ち上がった-そのときだった。りーんりーんと鈴が鳴るような音を耳にした。窓の外からだ。「虫」のようだった。めったにないこともあり、きれいだなと耳をすましてみた私に、それは心地よい眠気を誘った。

翌日、そのことを家族に話してみると、母に「あんた…それ、エアコンの音ちゃうの?」と言われた。「はぁ~、情緒のかけらもないわ」と私はあきれた。が、思い返してみると、たしかに不自然な点はいくつかあった。例の音には生き物の声らしい抑揚がなく、リズムも一定だった。そういえば相棒ともかれこれ長い付き合いである。

その夜。自室を先日とまったく同じ環境にしてみたが、例の音はやってこなかった。はてさて、あの夜に聴いた、私の火照った心を冷やしてくれた音の正体は一体何だったのだろうか。


松井勇輔(23) 堺市堺区

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