主張

五輪元理事の逮捕 不正の構図の解明を急げ

高橋治之容疑者
高橋治之容疑者

東京五輪・パラリンピックには、民間資金だけでなく巨額の公金も投入された。一過性のスポーツイベントではない。日本に有形無形の財産を残すための、国を挙げての一大事業だった。

その裏側で、一握りの企業や個人が不当に利益を得るような行為は許されない。

東京地検特捜部は受託収賄容疑で大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者を、贈賄容疑で大会スポンサーだった紳士服大手「AOKIホールディングス」前会長の青木拡憲容疑者らを逮捕した。

高橋容疑者は大手広告代理店「電通」の元専務で、サッカーの2002年ワールドカップ日韓大会の招致当時から世界に知られた人物である。

今回の事件では、AOKI側から大会スポンサー契約などで有利な取り計らいを受けたいとの依頼を受け、計5100万円の賄賂を受け取った疑いがある。

また、高橋容疑者が代表を務めるコンサルティング会社「コモンズ」は、AOKI側からほかに2億3千万円を受け取っており、東京五輪招致委員会から総額約8億9千万円の振り込みがあったことも判明している。

日本勢の活躍に加え、大会ボランティアらの献身が世界から高い評価を得たのは、わずか1年前のことである。感動や興奮の記憶、「スポーツの力」を汚す今回の事件に強い憤りを覚える。

不正の構図を徹底的に解明したうえで、その根を一刻も早く断ち切るべきだ。

東京大会に限らず、五輪招致をめぐっては過去にも数々の疑惑が取り沙汰されてきた。五輪などの大型スポーツイベントの招致に伴う不透明な金銭のやり取りを「必要悪」と捉え、目をつぶる風潮がスポーツ界全体を覆っていたのも事実である。

日本オリンピック委員会(JOC)をはじめとする競技団体は自ら稼ぐ力に乏しく、広告代理店に過度に依存してきた。日本のスポーツ界もそうしたあり方を厳しく再考すべきである。

ただし、今回の事件をもって東京五輪の開催自体を「負の遺産」と批判するのは、論理の飛躍というべきだろう。

「スポーツの力」が果たした役割は決して小さくない。それらが全て否定されるようなことがあってはならない。

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