話の肖像画

女優・泉ピン子<17> 時代映した役柄、大女優・杉村先生の凄み

NHK連続テレビ小説「おしん」が終わったころ。このころから「美しくなった」と言われるように
NHK連続テレビ小説「おしん」が終わったころ。このころから「美しくなった」と言われるように

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《NHK連続テレビ小説「おしん」や「花咲け花子」(日本テレビ系)で、すっかりお母さん役が板についていたが、新たな境地にも。昭和59年、「週末だけの恋人」(TBS系)では、恋に揺れる着物学院の着付け教師を演じた》

内容は、はっきり言っていかがなものか、というストーリーでしたが、初めてべえちゃん(笑福亭鶴瓶さん)とドラマに出た作品です。今はツルツルですけど、当時はもじゃもじゃ頭でした。相手役の竜雷太さんのほか、そのべえちゃん演じる遊び人からも思いを寄せられる役。当時の夕刊フジの見出しには「ピン子 やっと〝女に〟」と書かれていますね。失礼ですね。でも、このころの夕刊フジには、今はない勢いがあったように思います。最近はおとなしいですね。

《同年の「黒白(こくびゃく)の河」(日本テレビ系)では、愛する男を救おうとする地方巡業のストリッパー役を体当たりで演じた》

よく覚えています。東京・渋谷の道頓堀劇場に通って、ストリッパーの着物の脱ぎ方を研究しました。舞台に上がって、音楽に乗って踊り、お客さんに帯を解いてもらう。そのまま横座りして、片膝を立てると、太ももがチラリ…という具合です。

あんまり堂に入っていたものだから、撮影現場の男性陣から、もともとストリッパーをやっていたと勘違いされました。(仲の良い俳優の)西田敏行君からも「本当に良かった。元ストリッパーだったんじゃないの?」と褒められました。

面白かったです。このときのプロデューサーは、私にいろいろな役をさせてくれました。若くして亡くなってしまったのですが、とても良い方で、役者を見つけてくるのが上手でした。

《次にヒロインを演じた「心身症の犬」(日本テレビ)では、ヒロインによく似た女性が事件のカギを握るという設定だったため、大々的に「そっくりさんコンテスト」が開かれた》

こんなバカなことをやっていたなんて、今では信じられません。こんな時代があったなんて…。こうやって振り返ってみると、あっという間に、月日は過ぎ去るものだと実感します。

《舞台でも活躍が続く。60年3月、橋田寿賀子さん脚本、石井ふく子さん演出の「ハナと花子」で、初めて演劇で主演を務めた》

橋田先生が「あなたのために力を入れて書いた」と言ってくれたのはうれしかったのですが、セリフが長い。緊張と心配で、不眠症と下痢に悩まされました。でも、役者は皆そうだと思います。平気で眠れる人に、良い役者はいないでしょう。

《同年6月の「浮巣」では、尊敬する女優の杉村春子さん、森光子さんと共演した》

懐かしいですね。杉村春子と森光子、あれだけの大女優だったのに、亡くなってしまった今では、誰も名前を出しもしません。寂しいものです。

共演したとき、杉村先生はとても怖かったです。稽古場のこちらの端でセリフを言っていると、あちらの端から「違うわよ!」と、叱責が飛んできます。着物の着方ひとつでも際立っていました。今の人はあんなにきれいに着物は着られません。立ち居振る舞いから生き方まで、役者のあり方を学びました。

杉村先生には、あの森さんですら、ダメ出しをされていました。「違いますよ、あなた。セリフの言い方が違います」って。

名古屋公演が終わって、次は東京公演というときに、「あーあ、(せっかく稽古をしたのに)また戻ってしまいましたね。でも、こういうお芝居が東京の方は好きなのでしょうから、ま、良いでしょう」と皮肉を言われたのも、とても怖かった思い出ですね…。(聞き手 三宅令)

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