ウクライナ穀物、薄氷の輸出再開 戦闘激化で曲折も

ロシアによるウクライナ侵攻後、黒海の港の封鎖で滞留していたウクライナ産穀物の輸出が国連の仲介を経て再開し、2週間あまりが経過した。16日にエチオピア向けが出発するなど、これまでに出航したのは20隻を超えた。中東やアフリカなどへの物資輸送の「目詰まり」が和らぎ、食料価格の下落傾向も表われてきた。ただ、ウクライナ南部の戦闘激化で曲折も見込まれ、先行きは不透明だ。

国連食糧農業機関(FAO)によると、7月の食料価格指数が前月比8・6%下落した。国連とトルコ、ロシア、ウクライナの4者が7月下旬に輸出再開で合意。国際市場で穀物供給が増えるとの見通しから、価格下落を後押ししている。

小麦相場は侵攻直後の3月に過去最高値を更新し、その後は1ブッシェル(約27キログラム)当たり10ドル台の高値水準で推移。ウクライナ産輸出再開に加え、景気後退に備える投機筋の穀物市場からの撤退が相次ぎ、相場は8ドル台と侵攻前まで戻った。

一方、ウクライナ産の第一便は今月1日に出発。ウクライナの黒海に面したオデッサ港など3つの港から出港が続いている。ロイター通信によると18日までに25隻が出港した。世界食糧計画(WFP)のチャーター船も16日、2万3千トンの小麦を積み、飢餓が深刻化するエチオピアへ向かった。

輸出再開で「世界的な食料危機の悪化を食い止めるチャンス」(世界食糧計画のビーズリー事務局長)などと期待が高まっている。

ただ、ウクライナ産の第一便はレバノンに向かったが、買い手から受け取りを拒否された。運航の遅れや品質が理由とされる。英メディアによると、同船は転売を経て最終的にシリア南部タルトゥース港に到着したとみられている。

黒海の港に出入りする貨物船は、トルコのイスタンブールに開設された「合同調整センター」で、武器の積載がないか査察を受けてから目的地へと向かう。

ウクライナ側は月100隻超の出港を計画。食糧価格下落が期待されるが、同国南部で戦闘が激化しており、暗雲が垂れ込める。

また、侵攻の影響でウクライナの生産自体が減少する懸念も残る。野村証券の大越龍文シニアエコノミストは、「10~12月に輸出が始まる今年収穫したウクライナ産穀物が供給不足の見通しとなれば、年末に向けて小麦相場が緩やかに上昇する可能性がある」と分析する。(石川有紀、西村利也)

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