海底のレクイエム

コロン島沖の水上機母艦「秋津洲」

「秋津洲」(あきつしま)は1942(昭和17)年に竣工した水上機母艦である。主に大型飛行艇の補給や整備を任務とする艦で、後部の大型クレーンが特徴的である。同型艦はない。ソロモン方面の作戦やキスカ島撤収作戦などに活躍したが、1944(昭和19)年9月にフィリピンのコロン島沖にて、米機動部隊艦載機の攻撃により撃沈した。

「秋津間」の艦尾にアプローチするダイバー。「秋津州」は左舷を下に横転して沈んでおり、写真で水平に見える面が舷側で、丸く舷窓が見える(戸村裕行撮影、2015年10月)
「秋津間」の艦尾にアプローチするダイバー。「秋津州」は左舷を下に横転して沈んでおり、写真で水平に見える面が舷側で、丸く舷窓が見える(戸村裕行撮影、2015年10月)

水上機母艦「秋津洲」はフィリピン、パラワン島の北に位置するコロン島沖に眠る沈船である。

このコロン島周辺海域は、第二次世界大戦中に日本海軍の停泊地として利用されていたそうだが、1944年(昭和19)年9月24日のコロン湾空襲などで多くの船が撃沈され、現在では約10隻程の船を実際に海中を潜ることで見ることができるダイビングスポットとして人気のエリアである。

それら沈船群の中で、代表的な船の一つがこの「秋津洲」ではないだろうか。

コロンの港からバンカーボートで約1時間。島々に囲まれたこのエリアは、海中の透視度が悪い時は数メートル先までしか見えないということもあり、今回、案内をお願いしたローカルのガイドもその状態を「ミルキー」と言うほど濁り乳白色となる。

幸いにしてこの取材時には10~15メートル程度の視界を得ることができた。

大型飛行艇を艦上に吊り上げる艦尾の大型クレーンは「秋津州」最大の外見的特徴であるが、この部分は驚くほど状態よく残っており、ダイバーとの比較で、その大きさがよくわかる(戸村裕行撮影、2015年10月)
大型飛行艇を艦上に吊り上げる艦尾の大型クレーンは「秋津州」最大の外見的特徴であるが、この部分は驚くほど状態よく残っており、ダイバーとの比較で、その大きさがよくわかる(戸村裕行撮影、2015年10月)
クレーン船体部と残されていたプーリー(滑車)。これもかなり状態よく残っており、写真で見ても70年前に沈んだ艦の艤装品とは思えない(戸村裕行撮影、2015年10月)
クレーン船体部と残されていたプーリー(滑車)。これもかなり状態よく残っており、写真で見ても70年前に沈んだ艦の艤装品とは思えない(戸村裕行撮影、2015年10月)
クレーン基部に増設された三連装機銃はあまり良い状態ではなく、銃身は相当に腐食している(戸村裕行撮影、2015年10月)
クレーン基部に増設された三連装機銃はあまり良い状態ではなく、銃身は相当に腐食している(戸村裕行撮影、2015年10月)
艦橋直後のマスト上部。基部から上部を見上げるかたちで右側が艦首方向(戸村裕行撮影、2015年10月)
艦橋直後のマスト上部。基部から上部を見上げるかたちで右側が艦首方向(戸村裕行撮影、2015年10月)

(取材協力 ダイビングサービス「トレジャーズ」)

水中写真家・戸村裕行

1982年、埼玉県生まれ。海底に眠る過去の大戦に起因する艦船や航空機などの撮影をライフワークとし、ミリタリー総合誌月刊『丸』にて連載を担当。それらを題材にした写真展「群青の追憶」を靖國神社遊就館を筆頭に日本各地で開催。主な著書に『蒼海の碑銘』。講演、執筆多数。

雑誌「丸」
昭和23年創刊、平成30年に70周年迎えた日本の代表的軍事雑誌。旧陸海軍の軍 艦、軍用機から各国の最新軍事情報、自衛隊、各種兵器のメカニズムなど幅広 い話題を扱う。発行元の潮書房光人新社は29年から産経新聞グループとなった 。毎月25日発売。

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