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宮嶋茂樹 英霊の嘆きが聞こえてくるで

デモ隊に向けて「静かに」と書かれたカードを掲げて無言の抗議を行う「静かな8月6日を願う広島市民の会」のメンバーら=6日午前、広島市中区(矢田幸己撮影)
デモ隊に向けて「静かに」と書かれたカードを掲げて無言の抗議を行う「静かな8月6日を願う広島市民の会」のメンバーら=6日午前、広島市中区(矢田幸己撮影)

今年の夏は例年にない暑い夏らしい。しかし、エアコンが普及してなかった戦争中の内地はもっと暑かったはずである。いや南方の島では新型コロナウイルスよりも恐ろしいマラリア、アメーバ赤痢などの伝染病が蔓延(まんえん)、治療や予防に必要な薬もワクチンも、いや食料や水さえもままならなんだのである。

くしくも今年は、太平洋の戦いでも最も激しい戦闘が繰り広げられたガダルカナル島の戦いから80年である。飢えと渇きと病に苦しめられた日本軍将兵はこの島を「餓島(がとう)」と呼んだ。それほど悲惨な戦いが原爆の悲劇ほど日本の若者たちに伝えられていないことが残念である。

原爆投下の8月6日と9日の間に、ガダルカナル島には海上自衛隊の護衛艦「きりさめ」が入港。現地ソロモン諸島政府はじめ、日米豪からも軍民合わせた高官らが参列して、しめやかに慰霊祭が開かれたことはあまり知られていない。

一方、その前の6日、広島での原爆犠牲者を悼む慰霊式(平和記念式典)でのことや。地元選出の岸田文雄首相も参列したが、よりによってその式典の最中に、おごそかな雰囲気をブチ壊すかのように会場近くで〝デモごっこ〟を繰り返していた団体から、「安倍(晋三元首相)は殺されて当然だ」などという趣旨のシュプレヒコールが繰り広げられていた、というのである。

国連の事務総長をはじめ、世界中からVIPが集い、原爆で犠牲となった女性や子供を含む多くの市民を追悼し、平和を祈念する式典である。

ちなみに、式典には招かれなかった駐日ロシア大使もこれに先立って広島を訪れ、慰霊碑に献花したという。

この大使、戦争前には「侵攻はない」と日本人に大ボラ吹いて、侵攻後もプーチン大統領の代理人として日本でロシアの戦争犯罪まで正当化しとった人やで。何で、デモ隊は「死ね」やの「帰れ」やの安倍元首相に向けたような、きっついヤジは浴びせんの? 日当出んから?

情けない光景を見た英霊の嘆きは察して余りある。「これが命を賭してまで守ろうとした祖国なのか」と。

【プロフィル】宮嶋茂樹

みやじま・しげき カメラマン。昭和36年、兵庫県出身。日大芸術学部卒。写真週刊誌を経てフリーに。東京拘置所収監中の麻原彰晃死刑囚や、北朝鮮の金正日総書記(いずれも当時)をとらえたスクープ写真を連発。新刊は『ウクライナ戦記』。

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