国内小麦価格は高止まりも 続くウクライナリスク

ロシアの侵攻で滞留していたウクライナ産小麦の輸出が再開し、高騰していた国際小麦相場は下落傾向に転じている。ただ、ウクライナでの穀物生産で供給力が低下する懸念は払拭されていない。日本政府は輸入小麦の企業への売り渡し価格を10月からの半年間は据え置く物価高対策を決めたが、相場が上がれば来年度以降も対応が求められそうだ。

小麦相場はロシアのウクライナ侵攻直後の3月に過去最高値を更新し、その後は1ブッシェル(約27キログラム)当たり10ドル台の高値水準で推移。7月以降は滞留していたウクライナ産穀物の輸出再開の機運の高まりに加え、穀物価格の上昇を見込んだ投機筋が景気後退に備え穀物市場からの撤退が相次ぎ、相場は8ドル前後と侵攻前の水準まで戻った。

ただ、国連食糧農業機関(FAO)のリポートによると、ウクライナの生産リスクとして「紛争の影響により、冬作物の種がまかれた農地のうち20~30%が2022~23年期には収穫されない見込み」と指摘する。

ロシア侵攻の影響でウクライナの穀物生産が減少する懸念について、野村証券の大越龍文シニアエコノミストは、「10~12月に輸出が始まる今年収穫したウクライナ産穀物が供給不足の見通しとなれば、年末に向けて小麦相場が緩やかに上昇する可能性がある」と分析する。

そうなった場合、国内需要の8割超を輸入に頼る小麦価格への影響も避けられない。輸入小麦は政府が商社から買い付け、製粉業者に売り渡している。価格は4月と10月に改定され、相場などを参考に過去半年の平均買い付け価格をもとに算出しており、相場が上昇すれば売り渡し価格の値上げに直結する。

今年4月は主要輸入先の北米の小麦が高温で不作となった影響で過去2番目の高値となり、10月は紛争の影響で売り渡し価格がさらに2割程度上がると試算されていた。

物価高抑制に向け、今月15日に政府は10月以降の売り渡し価格を据え置く対策を決めた。足もとで小麦相場は下落しているとはいえ、大幅な生産環境の改善が見込めない現状で高値水準は続くとも予想される。パンや麺類の小売価格に占める小麦の割合は1割未満と小さい。ただ、小麦以外の原材料や資材価格の値上がりも勘案すれば、しばらく小麦製品の高止まりは続くとみられる。(西村利也)

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