社会人を対象にした総合専門職大学院、社会構想大学院大学(東京都新宿区)。研究領域拡大に伴い、今年4月に社会情報大学院大学から名称変更した。また、時代の変化に対応するコミュニケーションのあり方を探究するため広報・情報研究科をコミュニケーションデザイン研究科と改称。昨年4月に開設した実務教育研究科は、働く人の「実践知」を体系化し、新たな知識として社会課題に結び付けていく人材育成を展開している。吉國浩二学長に、同大が取り組むリカレント教育について聞いた。
--名称を社会情報から社会構想に変更した意図は
「本学は、組織のコミュニケーション戦略の中核となる人材育成を目指して平成29年に設立された。企業や行政の多様な分野から集まった院生とともに、理論と実践を融合し、社会課題の解決に取り組んできた。新たな研究科開設に伴い、まさに社会を構想する社会人教育を目指していくことを明確にするため、名称変更した」
--コミュニケーションデザイン研究科が誕生した
「従来の広報は、企業の商品やイメージを売り出す〝PR〟の印象がある。しかし、時代の変化や情報化に伴い、広報の役割は企業理念を社会と共有することに移り変わり、双方向性のコミュニケーションが求められている。広報は持続的な成長戦略の要であり、進化させたコミュニケーションデザインという形で研究を深めていく」
--昨年4月には実務教育研究科も設立された
「専門職大学制度始動に合わせ、実務家教員育成が急務となり、6カ月間の養成課程を設けた。しかし、指導力強化だけではなく、知見を体系化する場が必要だと考え、実務教育研究科を設置した。社会に散在する〝暗黙知〟とは、実務にあたる方が持っている知識や経験。それらを言語化・体系化し、再び社会に適応する技術にしていく」
--どのような院生が集まり、所属組織の反応は
「働く人の意識も変わり、所属組織との結びつきというより、職務内容や社会を意識するようになっている。社会も多様に変化し、組織内だけでの人材育成は難しくなっている。学問と実践を兼ね備えた社会人の新しい学びの場は必要だと積極的に受け止められ、期待されている」
--どのような社会人の学び直し〝リカレント教育〟を目指していくか
「学び続けるだけではなく、知識を作り出す側になるリカレント教育を考えている。教員も学生も第一線で活躍しており、教育というよりは、互いに刺激し、学びあう緊張感があることも魅力だろう」(宮田奈津子)
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よしくに・こうじ 昭和50年、東京大学経済学部経済学科卒業。NHK入局後、横浜放送局長や経営委員会事務局長、専務理事などを歴任。コンプライアンス、人事、コンテンツの2次展開・海外展開、広報などを担当し退任。事業構想大学院大学副学長などを経て、社会情報大学院大学学長(現・社会構想大学院大学)。