解熱剤、コロナで不足深刻 一部で出荷調整

新型コロナウイルスの流行「第7波」で発熱患者が急増したのに伴い、医療機関や薬局で解熱鎮痛剤不足が深刻化している。政府が軽症者の受診抑制を呼びかける中、自宅療養に解熱鎮痛剤は欠かせないが、一部製品に出荷調整がかかり、代替薬も品薄になるなど影響が拡大。副作用などの安全面から子供や妊婦には処方できる薬も限られるため、混乱が長引く恐れもある。(外崎晃彦、星野謙)

神奈川県の女性会社員(38)は今月上旬、1歳の娘が発熱し、東京都内の小児科医を受診したが、処方された解熱鎮痛剤「カロナール」の少なさに戸惑った。「いつもは余裕をもって出してくれるのに、医師から『本当に必要な分だけ』といわれた。よく熱を出すので、余った際には家に置いておきたかったのだけれど…」と漏らす。

解熱鎮痛薬「カロナール」
解熱鎮痛薬「カロナール」

カロナールは解熱鎮痛効果のあるアセトアミノフェンが配合され、イブプロフェンやロキソプロフェンといった他の解熱鎮痛剤よりも比較的安全性が高いことから、子供や妊婦には優先的に処方されている。コロナ患者に対しても、発熱やのどの痛みを抑える対症療法で重宝されてきた。

カロナールの国内シェアの8割強を占める「あゆみ製薬」(東京)は7月29日、需要の急増で安定供給に支障が出るとして、出荷調整を発表。コロナ禍前の令和元年度に200ミリグラム錠換算で約18億錠だった生産量を今年度は約29億錠に増やす予定だったが、「想定を上回る需要となった」(担当者)という。

担当者は「7月下旬以降、前年度比で3倍になる日もあった。一度にここまで急激な受注が来るとは」と驚き、医療機関などに対し、「カロナールが必要な人に行き渡るよう、他の解熱鎮痛剤と使い分けてほしい」と要望した。

後藤茂之厚生労働相(当時)は7月29日の記者会見で、過度な買い占めを控えるよう医療機関や薬局に周知すると明らかにし、「適切な対応をしていく」と述べた。

医療現場では、メーカーの出荷調整前から品薄状態が続いている。

調剤薬局のくろみん薬局(東京都渋谷区)では7月中旬以降、40代以下の患者へのカロナールの処方が急増。毎日300錠分仕入れてきたが、同月下旬からは全く入荷されず、ロキソプロフェン系やイブプロフェン系の製剤に切り替えるケースもある。近隣の医療機関にはカロナールを余分に処方しないよう頼んでいるという。

千代田区の調剤薬局ではカロナールと同じアセトアミノフェン製剤で、処方箋なしで購入できる市販薬のタイレノールなども品切れに。カロナールの出荷調整発表後は買い占めなどを懸念し、1人1箱の販売制限を設けたが、翌日には売り切れた。薬剤師の男性は「高熱が出る人など、本当に必要な人が使えなくならないようにしてほしい」と理解を求める。

「安全面から、小児にはあくまでカロナールを処方する方針」と話すのは、世田谷区にある小児科医院の男性院長。ただ、近隣の調剤薬局では品薄状態となっており「処方を最低限に絞っているが、数日後には出せなくなるかもしれない」と不安な表情を浮かべた。

院内処方を行う中野区の小児科医院では今月に入り、カロナールの在庫が尽き、代替薬の処方を始めた。職員の一人は「カロナールを指定して求める保護者もいるが、説明して納得してもらっている」と苦しい胸の内を明かした。

医療行政に詳しい城西大の伊関友伸教授は「政府が受診抑制を求める以上、自宅療養時に安心して使える解熱鎮痛剤は不可欠。国は財政支援を含め、メーカーに増産を促すなど数量確保に力を入れる必要がある」と指摘。「代替薬を使うことへの理解も必要で、医療関係者、行政、国民らが知恵を絞り、必要な人に必要な薬が届くような仕組みを作っていくことが大切だ」と強調した。

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