情報教員、一見足りるが… 地域間格差、民間と争奪戦

高校の「情報」の授業をサポートする専門家確保に向け、IT業界の人材バンクを積極活用する文部科学省の案が浮上した。もっとも、情報の教員免許を持つ教員は全国で約1万人。「免許保有者の合計数を考えれば情報教員は足りている」(文科省の担当者)にもかかわらず新たに専門家を確保しなければならない背景にあるのは、「情報」に対する取り組みの地域間格差だ。さらに民間企業との人材の綱引きが、状況を複雑にしている。

「学校の事情で」

文科省の令和2年度の調査によると、全国の公立高に情報の免許を持っている教員は9926人おり、同年度に公立高で情報の授業を担当した教員は5072人いた。数字上は情報免許を持つ教員だけで情報の授業を行うことが可能だったことになる。

しかし、実際には免許取得者の約6割に当たる6064人は情報の授業を受け持っておらず、授業を担当した5072人のうち、1210人は情報の免許を持っていない専門外の教員だった。

この状況を生み出しているのは情報教員数の地域間格差だ。66の都道府県・政令指定都市のうち、東京都や神奈川県、横浜市など3都県15政令市では、情報免許を持っていない教員が情報の授業を担当したケースはゼロ。多くは都市圏の自治体で、いずれも高校での新学習指導要領スタートを見据え、情報教員の計画的採用を進めてきたという。

一方、残る48自治体では免許を持たずに情報を担当した教員が存在し、うち長野、栃木、新潟の3県では100人を超えていた。都市圏に比べ採用をうまく進められず、情報を含む複数教科の免許を持っている教員が「学校の事情で情報以外を担当せざるを得ないケースが多かった」(文科省幹部)ことが原因とみられる。

文科省は、情報免許なしで情報を担当することを極力避けるよう各教委に求める通知を出しているが、新学習指導要領により小中高の各段階で情報の授業が始まる中、教育現場での情報教員のニーズは調査時点に比べ高まっている。現状も多くの自治体で情報教員不足が続いているという。

進まぬ待遇改善

地方を中心に情報教員を確保したい自治体にとっては、民間との人材獲得競争が大きな壁となって立ちはだかっている。

情報の教員免許が取得できる全国の大学・学部は、IT業界にとっても魅力的な人材供給源。国内はもちろん、世界的にもIT業界の人材不足は慢性化しており、業界内での競争も激しさを増している。

こうした中、IT業界では、サイバーエージェント(東京)が5年春の新卒入社の初任給を42万円に引き上げることを発表するなど、初任給や昇給、休暇なども含めた待遇改善が進んでいる。これに対し、授業以外にもさまざまな校務を担当する必要があるなど、多忙な割には給与が低水準とされる教育現場では〝ブラック職場〟の改善が進んでいない。

文科省は、教員免許を取得していなくても民間などで優れた知識や経験がありふさわしいとされた人材に都道府県教委が付与する「特別免許」の運用や、産休・育休などで現場を離れ教員免許を持ちながら学校で教えていない「潜在教員」などで教員不足に対応しようとしている。

しかし、これらも結局は外部人材の掘り起こしに過ぎない。都内自治体のある教育長は、「教員不足の根本となっている給与改善や働き方改革を文科省が本腰を入れて進めなければ、いくら人材の掘り起こしを現場に迫ってもうまくいかないのではないか」と指摘している。(大泉晋之助)

<独自>高校の「情報」指導でIT人材バンク活用へ 文科省

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