朝晴れエッセー

不自由を経験し…・8月16日

自らの不注意で左手首を骨折し、ギプス装着4週間の不自由な生活がスタートした。全ての家事は主人が。「これくらいは…」と立った台所でニンジンの皮1つむけない私に「そんなことせんでえぇから」。ひたすら優しい主人には「ありがとう」しか言えない。

その日からは全てに〝ありがとう〟。自分としては当たり前の言葉なのに…。「ありがとうばかり言わんでえぇから」と言われ、こんな場面は10年前に母を介護していたときと同じだなぁと気付いた。

母は〝ありがとう〟の名人だった。「ありがとう」の言葉には、もちろん感謝の気持ちが100%。その気持ちの後に「申し訳ない」「情けないなぁ」って思いが含まれていることに、今、気付かされた。

母も介護されながら、今の私と同じようにありがたいけど申し訳ない、そして情けない。そんな思いをさせていたのかもしれなかった。

「仕方ないやん。こんな体になったんやから」。常々主人が言っている言葉に救われたのは、「大事より小事。小事より無事」。事無しではなかったが大事に至らずと思う。

母の笑顔があればと、苦もなく母を介護できた私。今、不自由を経験し、できることは、眉間のシワを消し、口角を上げて…。情けなく、申し訳ない気持ちを隠しながら感謝の気持ちをいっぱい込めて、「ありがとう」と伝えることだけ。母に負けないありがとう名人になろう! ギプスが取れる4週間後も…。


大槻高子(66) 神戸市東灘区

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