防衛省「認知戦」強化 ウクライナ侵攻で危機感

衆院予算委で答弁する岸田文雄首相=5月26日午前、国会・衆院第1委員室(矢島康弘撮影)
衆院予算委で答弁する岸田文雄首相=5月26日午前、国会・衆院第1委員室(矢島康弘撮影)

防衛省が認知領域の作戦能力構築に乗り出すのは、ロシアによるウクライナ侵攻に伴い「認知戦」の重要性が再認識されたからだ。中国はすでに認知領域の能力向上を進めており、これに対抗する上でも新たな作戦領域における取り組みは不可欠となっている。

「ウクライナ情勢をみてもフェイクニュースやSNS(交流サイト)の偽情報による認知戦、情報戦への対応が重要だ。国家安全保障戦略策定の議論の中で検討していく」

岸田文雄首相は5月26日の衆院予算委員会で、こう強調した。首相が危機感を示したのは、ロシアが偽情報を駆使してウクライナ国民を混乱に陥れるとともに、国際世論の操作をもくろむ動きが相次いだからだ。

露国防管理センター長のミジンツェフ将軍は3月19日の会議で、激戦が続くウクライナ東部スムイ州などで「ウクライナ軍が化学兵器の使用を準備している」と主張。プーチン大統領自身も「ウクライナには米国の支援の下でコロナウイルスや炭疽(たんそ)菌、コレラなどの軍事利用に関する研究施設があった」と非難するなど、露政府を挙げての認知戦を展開している。

こうした動きを制するためには、事前に相手の動きを把握し、その内容を積極的に広報するなど機敏な動きが求められる。台湾や尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐり一方的な現状変更の試みを繰り返す中国が認知戦に力を入れていることも政府関係者の危機感を高めている。

昨年11月に台湾の蔡英文政権が発表した国防報告書では、サイバー攻撃、SNSなどを通じた心理戦や偽情報の散布などによって一般市民の心理を操作・攪乱(かくらん)し、台湾社会の混乱を生み出そうとしていると指摘。台湾市民のリテラシー教育の強化や、動員体制の強化などを目指すとした。

日本としても中国やロシアによる認知戦に対抗するとともに、自ら積極的に情報発信して戦況を有利にする「戦略的コミュニケーション」の強化も図る。米国や英国などの同盟国・友好国とも連携する方針だ。

<独自>防衛省「認知領域」を追加 来年度から 分析・発信態勢強化へ


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