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台湾との経済的連帯を行動で 論説副委員長・長谷川秀行

台湾の総統府で会談に臨み手を振る蔡英文総統(右)とペロシ米下院議長 =3日、台北(総統府提供・共同)
台湾の総統府で会談に臨み手を振る蔡英文総統(右)とペロシ米下院議長 =3日、台北(総統府提供・共同)

ちょうど10年前、アジア太平洋経済協力会議(APEC)加盟国・地域の記者を対象に、台湾で企画された取材ツアーに参加したことがある。ハイテク工業団地を取材したり、政策当局者の話を聞いたりと、台湾経済の実情を知る貴重な機会となったが、今、改めて思い出すのは、APECの枠組みで記者を集めた台湾側の意図を問うたときの説明である。「台湾にはAPECしかないから」というのがその答えだった。

当時、各国の経済記者がもっぱら注目していたのは、後に発効することになる環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や「地域的な包括的経済連携(RCEP)」につながる議論である。そのいずれも台湾はほぼ蚊帳の外だった。

既存のAPECしか台湾が頼る大型経済連携の枠組みはない。こうした孤立の背景にはもちろん、台湾と国際社会の連携を嫌がる中国の存在がある。中国が参加するRCEPはもちろん、TPPのような枠組みにおいても中国に忖度(そんたく)しようとする国は少なくない。当時も今も変わらぬ台湾の現実だ。

そんなことを想起したのは、ペロシ米下院議長の訪台に反発した中国が、台湾に対する軍事的威嚇だけではなく、経済的にも報復する姿勢を示したからである。

中国は台湾産のかんきつ類や一部水産物の輸入と、天然砂の台湾向け輸出を一時停止した。果物から害虫や殺虫剤を検出したことなどが理由というが、誰も信じまい。強大な経済力で対立する相手に圧力をかける経済的威圧は中国の常套(じょうとう)手段である。

指摘したいのは、6月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)でも7月末の日米経済政策協議委員会(経済版2プラス2)でも、中国を念頭に置き、経済的威圧に対処する考えを確認したことだ。台湾が中国の圧力にさらされている以上、台湾に寄り添い、支えるのは民主主義国の責務である。

日本は当事国ではないから傍観するというのでは中国の振る舞いを黙認することになる。台湾と連帯するため日本が取るべき行動はあるはずだ。手始めに、中国と台湾が昨秋、ともに申請したTPP加盟で、中国については反対、台湾は賛成と岸田文雄首相が表明してはどうか。日本の同意がないと中国加盟の道は閉ざされる。いつまでも強権姿勢を改めない中国がTPPにそぐわないことを、まずははっきりさせておきたい。

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