〝実感なき〟物価高対策 止め時も課題に

物価・賃金・生活総合対策本部で発言する岸田文雄首相=15日午前、首相官邸(矢島康弘撮影)
物価・賃金・生活総合対策本部で発言する岸田文雄首相=15日午前、首相官邸(矢島康弘撮影)

物価高対策として岸田文雄首相は、消費者にとって身近な食品の値上げ抑制につながる輸入小麦の価格維持を指示した。ただ、小麦価格は昨年秋ごろから上昇し、すでに高値圏で推移。対策を講じても今の価格を引き下げる効果は限定的とみられ、ガソリン補助金と同様に、〝実感なき対策〟となる可能性がある。

「経済は生き物だ。切れ目なく大胆な対策を講じていく」。15日に開かれた「物価・賃金・生活総合対策本部」で、岸田氏はそう強調した。

岸田氏が対策が必要な対象として明示したのが小麦だ。輸入小麦の政府売り渡し価格は今年4月、主要輸入先の北米の小麦が高温で不作となった影響で17・3%引き上げられ、過去2番目の高水準となった。

政府は、これに穀物大国であるロシアとウクライナの紛争の影響で小麦の国際相場の上昇分が加わった場合、売り渡し価格がさらに20%程度上がると試算。家計支援へ負担軽減策が不可欠だと判断した。

しかし、スーパーなど小売りの現場ではすでに小麦製品の値上げが相次いでいる。10月以降に政府の売り渡し価格が維持されたとしても、今の価格が下がるわけではなく、物価高の家計負担を軽減する効果は乏しい対策となりそうだ。

また、今後の値上げを回避する効果についても、懐疑的な見方がある。食パンや麺類の小売価格に占める小麦の割合は1割未満と小さいためだ。SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは「小売価格は為替や原油高などさまざまな影響に左右されており、今回の対策で消費者が物価高が抑制されたと実感はしにくいだろう」と話す。

一方、10月以降も延長される見込みのガソリン補助金の効果も、あくまで価格上昇の抑制にとどまる。経済産業省によると、今月8日時点のレギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格は170円10銭。補助がなければ200円を超えているといい、38円程度が補助金で引き下げられているが、国民が十分に恩恵を実感できているとはいいがたい。

政府の補助がガソリンや小麦などに偏ることに、他業界から不満が生じる懸念があるほか、一度補助を始めると、止めたタイミングで価格が急上昇して混乱を招く恐れもある。9月末に期限を迎えるガソリン補助金について岸田氏は対策の検討を指示したが、単に延長するだけでなく、補助金を手じまいする〝出口戦略〟も含めた制度設計が求められている。

(蕎麦谷里志、西村利也)

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