柴門ふみの人生相談

やりきれない 「長生きは迷惑」母の一言

イラスト・千葉真
イラスト・千葉真

相談

50代の主婦。80代の母が脳梗塞と心不全になり退院後、実家でひとり暮らしをしています。私たち3人のきょうだいは仲が良く、訪問看護の日以外は、連携して実家に立ち寄り、母の様子を見るようにしています。

母はひとりで散歩に行けるまでに回復しましたが、買い物や通院、入浴には私が付き添います。私は負担に感じたことはなく、日々元気になる母を見ることをうれしく感じています。

ところが先日、母が「私が長生きすればするほど、あんたにずっと迷惑をかけ続けることになるのかなぁ」とつぶやいたのです。そんなふうに母が感じていたのかと思うと、悲しくてやり切れない気持ちになりました。

母に堂々と私たちからのサポートを受け、長生きしていいんだと思ってもらうには、どうしたらいいのでしょうか?

回答

きょうだい仲が良く、協力してお母さまの介護をされているということ。素晴らしいです。きょうだいの中で何で自分だけが親の介護を、という不満の相談をよく耳にします。そういう人からすれば、連携して実家に立ち寄り母親の様子を見ている相談者の家庭の様子は、それだけで羨(うらや)ましくてたまらないと思います。

さて、お母さまが「長生きすればするほど迷惑をかけ続ける」とつぶやいたことを悲しんでおられるのですね? 私の母は90代ですが、同じようなことをたびたびつぶやきます。これは多分、今の80~90代の日本女性の多くがつぶやく言葉なのではないでしょうか。「人に迷惑をかけちゃいけない」という価値観で生きてきたきまじめな世代のつぶやき、つまり独り言なのです。

「人」の中には、家族、自分の子供も含まれています。けれど独り言なので、その言葉を聞いた人に答えは求めていません。むしろ、自分に言い聞かせるための呪文みたいなものだと捉えればよいのではないでしょうか。

「長生きすれば、あんたに迷惑かけることになるのかなぁ」は、翻訳すると「今あんたが面倒見てくれて本当にありがとう」という感謝の言葉なのです。そう受け取って、「そんなこと言わないで! 生きていてくれるだけでありがたい!」と明るく返すのが良いと思います。母が負い目を感じて長生きをうれしく思っていないのではないかと深刻に受け止め、子供たちが暗くなるのは、逆効果だと思います。そして、「どうしてもきょうだいだけでは無理になったら、他の人の手も借りるから」と、明るく軽く付け加えておくのも必要かと思います。介護も人生もこの先どうなるかが、全く読めない代物です。なので、そういう未来も覚悟しておくことが現実的だと思います。

回答者

柴門ふみ 漫画家。昭和32年生まれ。代表作は講談社漫画賞の「P.S.元気です、俊平」(講談社)のほか、「東京ラブストーリー」「恋する母たち」(いずれも小学館)。「ビッグコミックオリジナル」(同)で「薔薇村へようこそ」を連載中。故郷の徳島市観光大使も務める。

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