(昭和53年8月号収載。筆者は戦艦「大和」前部射撃指揮所員)
私が最初に浮上したとき、空から火の粉がいっぱい落下してくるのを感じつつ、すぐふたたび渦に吸い込まれてしまったが、しかしこのときは、大きく息を吸い込んだあとであるし、そのうえ爆発したあとの渦は小さく、弱く、私は体力を利して自力で浮かびあがることに成功していた。
水面に顔を出したときは、流れ出た重油のなかにつかっていたため、顔も手も、耳も鼻もまっ黒で、だれがだれやら、さっぱりわからない。しかも沈没、ついで起こった爆発直後であるから、六~七メートルの大波が洋上をうねっていた。