「メタバースの標準規格」は何を目指すのか 米国で始動した取り組みが描く世界

「フォートナイト」のようなビデオゲームがメタバースにあたるかどうかは、先々まで結論が出ない難しい議論だろう。とはいえ、ビデオゲームは3Dモデルやアニメーション、物理シミュレーションといった複雑なデータを扱えるようになる必要があることは確かだ。

そうしたデータを、あるアプリから別のアプリへと比較的簡単に転送できるようにしなければならない。シンプルな画像に互換性があるのと同じようにだ。ビデオゲームの世界はゲーム以外の用途でも使われるようになってきているので、こうした取り組みが求められる。

MSFは未来予測のためにメタバースの意味を明確にするわけではなく、いまの開発者が必要としている基本的なツールを用意することに注力している。名称と定義の議論については、ほかの人たちに任せるということなのだ。

仮想世界の構築に必要なもの

仮想世界、とりわけ現実世界と関わることが想定される仮想世界を設計するとき、膨大なデータ量を扱うことになるのは確実だ。ビデオゲームのすべてのオブジェクトやキャラクターは、ジオメトリデータ(それらの形状を表すデータ)や質感、重量や質量などの物理的特性、挙動、アニメーション、音声など、さまざまなデータで構成されている。

Khronos GroupはMSFで標準規格を制定することにより、例えば現在のJPEGのように簡単に相互運用できるデータにしたいと考えている。JPEGは非常に簡単に転送でき、あらゆるものが対応していることで知られている。どれだけ暗号化しても、誰かが右クリックして保存することを止められないほどだ。

それに比べて3Dオブジェクトでは、ソフトウェアが上下の向きさえ認識できないことがよくある。あるゲームエンジンから別のゲームエンジンに移動させると、データが正常に読み込まれないことも多い(それもインポートできた場合の話だ)。

Khronos Groupのプロジェクトのひとつである「glTF」はこの問題を解消しようとしている。このオープンスタンダードは2015年に公開され、OBJやFBXといったほかの3Dのファイル形式と競合している。

例えるなら、OBJはマイクロソフトがデバイスに依存しない画像データの表示方法として開発した古いBMPファイルのようなものだ。基本的には画像ファイルだが、機能が非常に限定的で重く、非効率である。一方のFBXは、アドビが開発した「Adobe Photoshop」で使われるファイル形式のPSDファイルのようである。より強力だが、開発元が権利を所有している。

この非常に限定的な比喩を続けると、glTFは3Dの世界におけるJPEGのようなものだ。少なくともKhronos Groupはそうなることを期待している。JPEGのファイル形式がこれほど重要になった理由は、オープンスタンダードで軽く、広く採用されるほど有用だったからだ。

glTFも同じように普及するかもしれない。あるいは、3Dオブジェクトを作成できるソフトウェア「Blender」の決して使われることのないインポート可能な数あるファイル形式のひとつに終わるかもしれない。だが、たとえそれが企業の占有に対するチェック機能としてだけだったとしても、相互運用可能な標準規格のニーズはなくならないだろう。

「ある技術が使えるようになる時期と、それを広く利用可能にする標準規格の公開時期が大きく開いた場合、企業の占有技術がメタバースのインフラに組み込まれる危険性があります。そうなることは誰も望んでいないでしょう」と、トレベットは説明する。「しかし、利用可能な標準規格がなければ、選択肢はないのです」

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