主張

法隆寺への支援 ネットの縁を未来へ繫げ

奈良県斑鳩町の世界遺産、法隆寺が、インターネットで支援を呼びかけたクラウドファンディング(CF)で、目標の8倍近い1億5700万円を集めて終了した。

運営サイトによると神社仏閣部門では過去最高額で、広く浅く不特定多数から集める新しい寄付の形と期待される。一方で著名な観光寺院ゆえの成功ともいえ、今後の広がりが課題だ。

法隆寺は6月中旬に募集を始め、半日で当初目標の2千万円に達した。注目は仏像や建物など文化財の修復ではなく、植木の剪(せん)定(てい)や設備メンテナンス、警備などの維持管理費を募ったことだ。

長引くコロナ禍が背景にあり、年間約65万人だった参拝者は令和2年度に約20万人に激減した。経費見直しや節約にも努めたが、来年は姫路城とともに日本初の世界遺産に登録されて30周年になる。節目の年を「美しい法隆寺」で迎えたいという願いを掲げたところ、多くの人が共感した。

支援者のコメント欄には「修学旅行で訪れた」「日本の宝を守って」などの声が多く、「誰もが知る法隆寺」の窮状だからこその支援といえる。

新たな可能性がみえたのは、支援者の年代別内訳で25~34歳の若い世代が27・8%と最も多かったことだ。サイト運営のレディーフォーによると、44歳までが全体の6割以上を占め、スマートフォン時代に育ちZ世代と呼ばれる18~24歳も12・4%と1割を超えた。5千円からと気軽に寄付できることや、広くメディアに取り上げられた影響もあると分析する。

寺や神社は古来、生活や地域コミュニティーと密接に関わる存在だ。その中で人々の心を支え、文化財や芸術を生み、日本文化をはぐくむ土壌ともなってきた。

ところが文化庁の宗教年鑑(令和3年版)によると、神道系(約8万4500)、仏教系(約7万7000)ともに宗教法人数は減少の一途だ。多くが檀(だん)家(か)や氏子に支えられてきたが、人口減少時代で存続の危機に直面している。

文化庁は今年度から国宝などの修理や防災工事などの費用をCFを含む寄付で調達すると、国の補助金も増える仕組みをスタートさせた。民間資金を活用し、意欲ある寺社を後押しする試みだ。

仏教に結縁(けちえん)という言葉がある。ネットが結ぶ若い世代との縁を未来への望みに繫(つな)いでいきたい。

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