日本の自動車市場が大きく変わるかもしれない 新型BYDアットスリー試乗記

回生ブレーキの効きはどちらかというとマイルド。「強めの制動をかけないほうが、アクセルワークでの速度コントロールがやりやすいと考えている」とBYDの日本法人では言う。

もうひとつ、私が感心したのは、乗り心地。大きなバッテリーを積むBEVの常として車重は重め。今回試乗したのは、右ハンドルのオーストラリア仕様(速度計はキロ表示だった)で、車重は1750kgと表記されていた。

いわゆるバネ上重量が重めのため、乗り心地は重厚感があり、一定速度での巡航は快適そのもの。段差越えのときのショックのいなしかたも上手だ。

アットスリーは全長4455mmで、レクサス「UX」(4495mm)、「カローラクロス」(4490mm)、スバル「スバルXV」(4485mm)などより小さく、BMW「X2」(4355mm)よりすこし大きい。比較的コンパクトなボディサイズだが、乗り心地も、期待よりはるかに上質であると感じた。

“バッテリーこそBYDの根幹の技術”というだけあって、アットスリーにはリン酸鉄リチウムイオンバッテリーによるブレードバッテリーというシステムを採用。モジュールでなく、最初からバッテリーパックとして作りあげるため、高効率で、省スペースで、かつ構造材の一部として使えるのも特徴だ。

対面販売で安心感を与えたい

「日中合作です」。試乗会場でインタビューさせてもらった、ビーワイディージャパン株式会社のリユ・シュエリアン(劉学亮)社長はそう語る。というのは、ボディの金型の製作は群馬県のTATEBAYASHI MOULDING社。高い技術力が自慢というだけあって、アットスリーのボディパネルは複雑なカーブがきれいに実現している。

スタイリングは、アウディやメルセデス・ベンツのヘッド・オブ・デザインを務めたドイツ人のウォルフガング・エッガー氏率いる深圳のBYDグローバルデザインセンターの仕事だという。

「日本の人は、成功するの? と、言いますけれど、BYDが日本に来てから20年が経ちます。そのあいだにバッテリーをはじめ、2015年から導入する電気バスはシェアが7割に達していますし、電動フォークリフトでも実績があります。そういう活動を知っていらっしゃる人なら『ついに乗用車も売るんですね』と、おっしゃるのではないでしょうか」

劉社長は自信をのぞかせた。

実際、広東省深圳市に本社を置くBYD(比亜迪股份有限公司)は携帯電話用電池で世界ナンバーワン、リチウムイオン電池ではナンバースリーの実績を誇る。同時に、2003年スタートの比亜迪汽車事業では早くから電動車を手がけ、電池やモーター、インバーターといった主要パーツの工作技術と制御技術において、高いレベルでノウハウを蓄積しているという。

アットスリーの発売は2023年1月を予定しているそうだ。そのときまでに、車内のインフォテインメントシステムも充実させたいと、BYDの日本法人は考えているようだ。なにしろ「EVは、したいと思ったことがすべて出来るプラットフォームです」と劉社長は述べる。

日本では、光岡自動車を入れれば9つの乗用車メーカーがあるし、海外ブランドも多い。そこに入ってこようというのは、かなりのチャレンジではないか。私でなくても、そう思うひとはいるのでは。

「私たちが無理やり日本市場に入ってこようというのではないのです。日本社会にニーズがあるはずだと思っているのです。多様化する市場において、私たちの乗用車もひとつの選択肢になり得ると信じています」

上記のインフォテインメントシステムの充実について、「家に帰りたくなくなるクルマ」と劉社長はなんともおもしろい定義をしている。まだ価格も未定であるが、出来るだけ買いやすい価格で出したいそうだ。

当面、日本全国で100店舗ぐらいのディーラーを作り、対面販売をおこなっていくという。「(ユーザーに)お会いすることで消費者に安心感を与えたい」(劉社長)そうだ。

文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)

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