救急搬送急増、病床逼迫…悲鳴上げる小児医療

新型コロナウイルスに感染して入院する乳児の世話をする看護師=5日、東京都世田谷区の国立成育医療研究センター(同センター提供、一部画像を処理しています)
新型コロナウイルスに感染して入院する乳児の世話をする看護師=5日、東京都世田谷区の国立成育医療研究センター(同センター提供、一部画像を処理しています)

新型コロナウイルスの流行「第7波」で子供たちへの感染が拡大し、小児医療の現場がかつてない緊迫感に包まれている。救急搬送される小児患者が相次ぎ、病床も次々と埋まっていく状況だ。意識障害などを伴う重い合併症を併発し、重症化や死亡するケースも増えつつあり、現場の医師らには危機感が漂う。

国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)では7月以降、1日20人以上の子供が救急車で運ばれてくる状況が続く。7月中に受け入れた小児の救急搬送は672件と昨年同時期(352件)の約2倍に。コロナ以外にRSウイルスなどの感染症も子供たちの間で流行しており、対応件数の上積みに拍車をかける。

コロナの症状で目立つのは高熱、せきなどの呼吸器症状、熱性けいれんだ。感染症科の大宜見力(おおぎみ・ちから)診療部長は「第7波に入り、発熱に伴うけいれんの患者が多い印象。けいれんは数分程度で治まることが多いが、投薬をしてもなかなか止まらないケースも目立つ」と明かす。

9日時点ではコロナ病棟36床の全てが埋まり、7月中旬以降の病床使用率は80~90%台の日が続き、100%の日もある。入院患者は中等症が多く、中には酸素投与が必要な子供もいるという。

「第6波の時も病床使用率がここまで高いことはなかった」と大宜見氏。「患者がこれ以上増えれば、高度先進医療を必要とする患者を診るという病院の役割を果たすことが難しくなる」と訴える。

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重症患者らを受け入れる埼玉県立小児医療センター(さいたま市)も負担増が深刻だ。救急搬送されてくる小児患者は4~6月は月数人程度だったが、7月は20人近くに急増。感染免疫・アレルギー科の菅沼栄介科長は「経験したことのない対応件数だ」と話す。

感染後、けいれんや意識障害が出て運ばれる患者が多く、脳炎、脳症と診断されるケースもある。人工呼吸器を装着して治療に当たる患者もいるという。

自治医科大とちぎ子ども医療センター(栃木県下野市)は今年に入り、コロナ感染が原因で急性脳症を発症して重症化した子供3人の治療に当たった。

4月下旬に運ばれてきた10歳未満の女児はコロナ感染後に発熱などで自宅療養指示となっていたが、意識障害などが出て近隣の病院に救急搬送された。容体悪化が治まらず、同センターに運ばれて治療を受けたものの死亡した。基礎疾患はなかったという。

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小児科の村松一洋准教授によると、急性脳症はコロナ感染に限らずさまざまな感染症への罹患(りかん)が引き金となる。感染により免疫機能が暴走する「サイトカインストーム」が起き、脳細胞が障害されることが原因の一つとして考えられる。

発症後は急激な状態悪化に見舞われる患者もおり、死亡した女児もこのタイプで救命は困難な状況だったという。重症化すれば重い後遺症が残る恐れもある。

子供はコロナに感染しても重症化しにくいとされているが、村松氏は「爆発的に感染が拡大する中では重症化する子供が増える」と危惧。重症化を防ぐ手段として、「5歳以上はワクチン接種を検討してほしい」と呼びかける。

同センターは重症患者の最後のとりでの一つだが、近隣病院に収容しきれない患者の受け入れ要請も相次ぐ。集中治療室やコロナ専用病床は満床状態が続き、小児のコロナ患者を隣接する同大付属病院の大人用コロナ病床で収容する状況にあるという。

「濃厚接触者になるなどして出勤できない医療スタッフも出る中、限られた人員で現場は必死に患者対応を続けている」。村松氏はそう力を込めた。(三宅陽子)

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