政府や政治家は、疑念を払拭できない教団とは明確に一線を画すべきである。まっとうな政治活動や政策まで白眼視される状況を深刻に受け止めなければならない。国民の信用、信頼を失えば、政治は前に進めない。
第2次岸田改造内閣が発足した。岸田文雄首相が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係の有無を点検するよう指示し、「結果を踏まえて厳正に見直すよう厳命し、了解した者のみを任命した」と述べた陣容である。
同じ日、都内で会見した旧統一教会はこうした任命基準について「誠に遺憾」と述べた。だが、過去に霊感商法や洗脳による合同結婚式、高額の寄付などで多くの被害者を出した教団と明確に一線を画すべきは当然である。
会見で旧統一教会側は「当法人が霊感商法を行ったことは過去も現在もない」と述べ、合同結婚式については離婚率2%の数字をあげて正当性を主張した。被害者の救済に取り組む弁護士らは、極端に低い数字は離婚すら難しい異常性を表したものととらえる。会見は、教団が現在も被害者を生み続けているのではないかとの疑念を払拭するには至らなかった。
複数の新閣僚からも旧統一教会との関係が報告された。関係には濃淡があり、関連団体は数多く、全てを把握するのは難しかったろう。ただ、国際勝共連合が旧統一教会の関連団体とは知らなかった―との弁明には耳を疑った。事実なら、政治家として不勉強、無知も甚だしい。
勝共連合は当初、反共を旗印に自民党右派や右翼団体と接触を図った。これは歴史的事実である。目的が近い団体との接近は自然なことだったろうが、表裏一体の教団による霊感商法などの反社会的活動が明らかになった時点で関係を断つべきだった。
一方で、政府や自民党の政策が旧統一教会の影響を受けているとの批判は教団の過大評価だろう。岸田首相は「旧統一教会の政策が不当に自民党の政策に影響を与えたと認識していない」と強調している。憲法改正などの公約は、教団と関わる以前からの自民党の党是である。
一連の批判は、安倍晋三元首相銃撃事件に端を発した。留意すべきは、このことを決してテロの肯定に結び付けないことだ。次の事件を誘発しないために。